数年前に、バンド遠征で大阪に行った。
たこ焼き食って、適当に安い酒飲んで、気持ちよくなったところでライブをして、それはもう楽しい夜だった。
打ち上げもそれなりに盛り上がった。俺は、ライブハウスのスタッフさんとペラペラ喋っていたのだが、スタッフさんの「僕ね、岸和田出身やねん」の一言で酒を飲む手が止まった。
「と言うと、カオルちゃんと会ったことあります?」
「あー、会ったことはないけど、話は聞いてるよ」
ゴクリと、俺は息を飲んだ。
本当にカオルちゃんはいたのだ…
実在する人物だったのだ。
岸和田市とは、大阪府泉南地域に位置する市で、だんじり祭りで有名だ。
とにかく岸和田はヤンチャな子が多い…らしい
そんなヤンチャな子達を描いた作家中場利一の自伝的小説「岸和田少年愚連隊」と言う作品がある。
岸和田少年愚連隊は映画化されており、主人公、中場利一(通称チャンバ)をナイティナインの矢部浩之が、相棒の小鉄を同じくナイティナインの岡村隆史が演じている。
この作品が昔から好きだった。
俺は昔から健康優良児であった。喧嘩なんてしたことがない。真面目で生徒会長までしていたことがある。普通に勉強して、ゲームしたり、読書したり地味目な少年だった。
だからこそ、俺はヤンキーに対して幾ばくかの憧れがある。
クラスのなんちゃってマイルドヤンキーとかじゃなくって、ビーバップハイスクールやクローズに出てくるようなガチガチの「いてまうぞ、オラぁ」と短ラン着て、気合い入った髪型したりしているヤンキーに俺は少しだけなりたかったな、って思う時がある。
そんなガッチガチのヤンキーを描いているのがこの「岸和田少年愚連隊」だ。
中学生のチュンバと小鉄は毎日喧嘩ばかりしていて、チュンバの彼女のリョーコは呆れ気味。
彼らの暴力と青春の果てには何が待っているのか…
この映画、殆どのシーンが喧嘩のシーン。その喧嘩相手と言うのが、木下ほうか、その手下を演じるのはブラックマヨネーズの吉田と野性爆弾のくっきー。
その他にも、FUJIWARAのフジモンや雨上がり決死隊の宮迫など、今活躍している吉本の芸人が数多く出てくる。
ストーリーはひたすらナイナイが喧嘩して、バカやるだけで、山も谷もあったモンじゃないが、何故だか俺はこの映画が好きなんだ。
きっと、俺は10代の頃、映画の中の彼らみたいに内にある爆発しそうなエネルギーを爆発させて暴れることなく、親や先生の言う通りに勉強しかしてこなかったなのだろうなと思う。
作中にカオルちゃんと言う岸和田最強の男が出てくる。カオルちゃんはヤクザも裸足で逃げる伝説の男で、なんと実在した人間らしい。
ライブハウスのスタッフさんにカオルちゃんの伝説を何個か聞いたが酷いものだった。
「電車の前に立って無理やり電車を止めて乗車する」
「ヤクザ数人を半殺しにする」
ほんまかいな!と言う話ばかりだったが、本当だろうと嘘だろうと、ここまで人の話題の的になる人物とは一体どんな人だったのだろうかと思いを馳せてしまう。
映画の中に出てくる岸和田と言う町は、薄汚くて下品で、そこに住んでいる人たちも柄が悪くって言葉遣いも最低だ。
でも、しかし、俺は、岸和田少年愚連隊を始めて見た十数年前から岸和田と言う町に興味深々なのだ。