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最強格闘家になろう 第十一話「ハロウィン相撲秋場所」

ハロウィンである。

秋の風物詩となりつつあるイベントである。

都会には思い思いに仮装した若者たちの姿が散見される。

賑やかな街並みは若者の活気で色めきあっており、皆笑顔で街中を歩く。

しかし、この光に寄せられて、招かれざる客も町にはやってくる。

彼らはハロウィンとかこつけて、仮装をし、街中を暴れて回る。

以前、ハロウィンで軽トラックを複数人の男たちが横転させると言う事件があった。

楽しいハロウィンの日が騒然となったのである。

実は彼らの正体はハロウィン部屋の力士達である。

彼らは年に一度ハロウィン場所で行われる取り組みに生活の全てを捧げている益荒男達だ。

お高く止まった軽トラック相手にガップリ四つで渡り合い、上手投げでこの戦いに勝利した。

彼らの取り組みは大きな話題となり、世論を騒がせた。

 

そんな彼らの取り組みに待ったを掛けた男たちがいた。「ドラゴン一族」である。

ドラゴン一族はドラゴンカーセックス(分からないお友達はお父さんかお母さんに聞いてみよう)に命を捧げた益荒男達である。

彼らは龍をモチーフにした象形拳の使い手達であり、なによりも車を愛する愛拳士である。

そんな彼らにとって軽トラックの一件は許せないものだった。

愛する女が力士達に嬲り倒されたのである。

彼らの確執は年々大きくなり、そして遂に今日、ハロウィン秋場所において待ったなしで決戦が行われようとしていたのである。

 

大柄な男たちが往来の真ん中で集まっていた。

道行く人は彼らの事を皆横目に見ながら足早に歩き去る。このお祭りに似合わない殺気が彼らから漏れ出ているからである。

「原さん来ますかね…奴ら?」

上半身裸でジーンズのみを身体に纏った男が言った。原と言われた男は腕組みをして、ただ肯くのみであった。

この原と言われた男、スーツに身を包んでいるがどこかおかしい。

見れば、よく見るとこれはボディペインティングである。原は坊主頭に髭を蓄えていた。

異様な体躯だった。

首が太い、顔よりも太い。肩と首の垣根が分からなくなっているほどだった。

その胸板は更に太い。しかし、肥満ではない。全身が筋肉に覆われているのだ。

かつて、かの新日本プロレス棚橋弘至は「筋肉は最高のファッション」と発言したことがある。

その言葉通りだった。ボディペインティングのスーツに身を包んだ原のファッションは、例え、アルマーニのスーツに袖を通した一流モデルであったとしても見劣りしてしまうであろう。

そう言った気品と野性味があった。

この男こそ、ハロウィン力士の横綱、「原田龍徳」である。

 

原達から遥か先の往来で人々の悲鳴が上がった。

何かが起こったのだ。

悲鳴が波の様に人々に広がっていく、波が原達に近づいてくる。

何かが原達に向かって近づいてきているのであった。

その波が原達を通過する、原達は皆、波の方向に視線をやった。

波が通過して数瞬後、それが見えた。

「やろう…考えやがったな」

原がそう言う。

往来の向こうからダンプカーが原達に向かって突っ込んで来たのである。

その運転席には藤波辰爾が乗っていた。

いや、違う、藤波辰爾にしては若すぎる。

それは全盛期の藤波辰爾のコスプレをしたドラゴン一族の族長、「藤浪ドラゴン」の姿であった。

 

ダンプカーを避ける為、人々が道路の脇に寄る。すると、モーゼが起こした奇跡の様に、人で溢れかえっていた往来に一本の道が出来た。

しかし、割れた海の底には巨岩が横たわっていたのである。ハロウィン力士達である。

彼らは避けることなく、原を中心にフォーメーションを組んだ。

原が最前列に、その後ろ左右に翼の様にハロウィン力士達が並び立った。

「ギェエエエエ!!!!」

原が奇声を上げる。それが合図だった。

力士達は皆、腕を胸の前で上下に重ね合わせた。

「ウォオオオ!!!!」

また原が叫ぶ。すると男たちは揃ってまたポーズを取る。

踊りのようだった。これはオールブラックスが行う「ハカ」に似ているが、その実全く違う。

ハロウィン力士たちが取り組みの前に行う舞踏「バカ」である。

 

バカを踊る力士達、そしてダンプカーで突っ込む藤浪。時間いっぱいであった。

両者はぶつかり合った。

ごわん!!!と言う鈍い音がした。

ハロウィン力士達とダンプカーがぶつかった音であった。

ハロウィン力士達はダンプカーを見事止め切った。

すぐさま、力士達はダンプカーの四方を取り囲み、力いっぱい押し込んだ。

メキメキと金属がひしゃげる音が街に響く。

運転席の藤浪は焦らなかった。

ただ、アクセルを踏み続けている。

実はその下半身は裸である。イキリ立ったイチモツを激しくハンドルに打ち付けている。

これはドラゴンカーセックス四十八手のひとつ「運転席位」であった。効果は気持ちいい。ただその一点に尽きる。

アクセルを踏み込むも力士達に押さえ込まれて、タイヤは虚しくアスファルトをかくだけであった。

タイヤのゴムが焦げるやな匂いがあたりを包む。

尚もダンプカーは音を上げてひしゃげ続けている。

しかし、力士達も限界であった。

身体中が真っ赤に染まっていた。

あまりにも力を入れすぎて、全身の血が肉が悲鳴を上げ始めているのである。

 

「危ない!!!このままじゃ死人が出る!!!誰か!!!誰か助けて!!!」

ようやく駆けつけたDJポリスが思わず拡声器越しに叫ぶ。その悲痛な声が街に響いた時、風が人々の間をすり抜けていった。

その風は犬に乗った全裸の男であった。

風はダンプカーの上に飛び乗った。

「待った!!!」

男は叫んだ。この男のことを我々は知っている。矢吹晴男である。