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最強格闘家になろう 第三十話話「風雲急を告げる」

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http://www.alfee.comより

 

東京ドーム…大晦日、格闘技イベント「SUNSET」を観覧するため集まった55000人は唖然とした。

彼らが待ちに待っていたメインイベント、

「最強ボクサー生田vs最強プロレスラー棚伏」が大波乱の展開となったからである。

これは後日、1231事件として語り継がれ、格闘技史に大きな爪痕を残すのであった。

その詳細については後日語るとして、今は喧嘩凸トーナメントに話を戻そう。

 

 

 

 

最強の暴走族がいた!!

その名はザ・ウルフィー!!

構成員2000人。武闘派愚連隊。ヤクザも避けて通る。それがザ・ウルフィーだ。

そのザ・ウルフィー最強の3人の幹部。

桜塚賢!!!形見沢俊彦!!!そして、

フォークソング達人、坂崎慎之助!!!

 

このトップ3人の元、構成員は愛のレジスタンスと言われ、名実とも日本最強の暴走族であることは疑いのない事実であった。

 

3人はその容姿も性格も全く違うが、それぞれがそれぞれをリスペクトし、ザウルフィーは盤石の体制であった。

ダンディーな桜塚、派手な形見、地味な坂崎。

 

では、このトップ3人のうち誰が1番強いのか?

この議論は尽きることがなかったが、

張本人たる3人には確信を持って言えることがあった。

 

坂崎慎之助こそが最強

 

その坂崎慎之助がトーナメントに出るのは自明の理である。

 

 

ティーピーワンダー対坂崎慎之助

 

2人は対峙し、試合開始の合図と同時に、スティーピーワンダーは滑るように坂崎の目の前に躍り出た。

フットワークではない、古武術の足運びだ。

坂崎がそのスティーピーワンダーに拳を叩き込もうとする。

しかし、スティーピーワンダーの連打の方が早かった。

その動きはまるで舞踏の様に美しかった。

それはまるで計算され尽くした音楽(ミュージック)の様であった。

ティーピーワンダーの拳が坂崎の身体を貫いていく、

天道(てんどう)
烏兎(うと)
天倒(てんとう)
眼窩(がんか)
独鈷(どっこ)
霞(かすみ)
人中(じんちゅう)
頬車(きょうしゃ)
頸中(けいちゅう)
簾泉(れんせん)
松風(まつかぜ)
下昆(かこん)
村雨(むらさめ)
天突(てんとつ)
秘中(ひちゅう)
早打(はやうち)
活殺(かつさつ)
雁下(がんか)
水落(みぞおち)

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全て人間の急所である。

 

これはひとたまりもない。

どの箇所も強く打てば命の危険がある人体の急所である。

 

しかし、坂崎は倒れなかった。

「異国の人、フォークソングは反体制なんだよ…こんな痛みに屈するか!!!」

 

坂崎はそう言うと、大柄なスティーピーワンダーの肩を掴み、大きく後ろに反り返った。

 

「出るぞ!!!」観客席の形見が唾を飲む。

「坂崎の必殺技だ!!!」隣の桜塚も叫ぶ。

 

「これが、俺のギャラクシーエクスプレスだぁあ!!!」

 

坂崎は自身の頭部をスティーピーワンダーの顔面にぶちかました。

血が2人の間から飛び散る。

見れば裂けたのは坂崎の頭部であった。

なんとスティーピーワンダーの顔面が打ち勝ったのである。

「ワルイナニイチャン、オレハカオノキンニクモキタエテルンダゼ」

 

坂崎は尚も倒れなかった。

「俺が倒れるわけにはいかねえよう…俺はよぉ…フォークの生き字引だからなぁ…」

 

そう言って、坂崎は笑った。

その坂崎を見て、スティーピーワンダーも悲しそうに笑った。

 

「マッタク、ナマジタフダカラジゴクヲミル…アンタ、ゼンシンカラ、to feel the fire シタコトアルカイ?」

 

そう言うと、スティーピーワンダーの腕と足が精密機械のような正確さで坂崎の身体を撃ち抜いた。

ティーピーワンダーの拳、そして足刀が打ったのは可動関節と呼ばれる箇所である。その数…

蝶番関節 
指節間関節
肘関節
螺旋関節 
手関節手根間関節
足根間関節
腕尺関節
膝関節
車軸関節 
下橈尺関節
正中環軸関節
顆状関節 
膝関節
中手指節関節
顎関節
足関節
距骨下関節
楕円関節 
手根中央関節
環椎後頭関節
顎関節
鞍関節 
母指手根中手関節
足根中足関節
球関節 
腕橈関節
肩甲上腕関節
中手指節関節
臼状関節 
平面関節 
肩鎖関節
手根間関節
足根間関節
豆状骨関節
半関節 
脛腓関節
肩鎖関節
椎体間関節
円柱関節近位橈尺関節
環軸関節

 

おおよそ全ての関節である。

これを正確にそして、確実に破壊され、坂崎は声を上げることすらできなかった。

そして、全身の関節が破壊されたことで、坂崎は倒れることすらできない。

 

「ドウダイ?オレノハヤビキハ?」

ニヤリとスティーピーは笑った。その顔はまさにSympathy For The Devil(悪魔を哀れむ歌)

 

フォルティッシモダ!!!」


ティーピーはそう叫ぶと、一撃一撃正確に重い打撃を打ち込んでいった。

肩甲骨
鎖骨
上腕骨
前腕骨
尺骨
手根骨
豆状骨
遠位手根骨
小菱形骨
有頭骨
有鈎骨
指骨

確実に人体を破壊していく。

「うわあわあわあわわわ!!!」

坂崎は痛みのあまり、狂ったように叫ぶ。

「モットキカセテクレヨ、オマエノシンフォニーヲ!!!」

ティーピーワンダーが拳を振り上げる。

その拳に大会スタッフが飛びついた。

それを合図に3人のスタッフがスティーピーの巨体に飛びつき、スティーピーを押しとどめた。

「お前の勝ちだ!!!殺すきか!?」

スタッフの1人が叫ぶ。

「オイオイ、キョウココニシュツジョウスルヤツラノナカニイノチヲオシムヤツナンテイナイゼ」

そう言ってスティーピーはスタッフを睨んだ。

ティーピーの覇気にスタッフはたじろいだ。

「そこの外国人の言う通りだぜ…勝負はまだついちゃいねえ…」

声のする方を見れば坂崎が立っていた。

破壊された関節、叩き折られた骨、その数、最早数えることすら憚られる。

しかし、坂崎は立っていた。

立っているだけではなく、折れた手を足を突き出し、歪なファイティングポーズを取り、スティーピーと対峙していた。

全身ズタボロ、顔は腫れ上がり、血は流れ、最早それが坂崎慎之助であるかどうかすらわからない。

それでも坂崎慎之助は立ち向かった。

「頑張れ!!坂崎!」

「負けるなあ!!!」

「まだ勝てるぞ!!」

観客席から、形見沢、桜塚をはじめ、ザウルフィーのメンバーが雄叫びを上げる。

皆、目に涙を溜め、おらが大将の背中を声で支えんとあらん限りの雄叫びを上げた。

 

「負けるわけにゃいかんのよ」

坂崎はヨロヨロとスティーピーに向い、その歩を進めた。

「どけ、まだ試合は終わっちゃいねえ」

ティーピーがそういうとスタッフはすごすごとマットの上から去り、また2人は相対した。

 

2人の間合いが重なった。

その刹那、2人は拳を振り上げ、相手の身体を撃ち抜かんと最後の打撃に備えた。

一瞬、2人の間に光が走る。

無論、実際に光が走るわけもない。

皆が見たこの光、この光は一重に坂崎慎之助と言う男の儀がその体から迸ったのであった。

 

光が消えた時、そこには異様な光景があった。

お互い、拳が相手の直前で寸止めになっている。

「コノヤロウ、ナグリナガラキゼツシタ…」

 

ティーピーはそう言うと、坂崎慎之助に背を向け、出入口へと向かっていった。

第八試合勝者!!!

ティーピーワンダー

 

ティーピーが去ったと同時にスタッフがすぐさま坂崎に駆け寄った。ザウルフィーのメンバー達は遂に我慢できず、観客席から飛び降り、我らが大将の元に駆け寄った。

 

ティーピーは振り返り、その光景を目にしていた。

「サカザキシンノスケ、サイコウニ、ロックナ…イヤ、フォークナヤツダッタゼ」

そう呟くと、彼は出入口の闇へと消えていった。

 

 

 

その頃、会場から程近い公園で1人の老人が倒れていた。

彼は顎を砕かれたのか、口から血を流し、目は虚であった。

冬の風が容赦なく老人に吹き付けるも、彼は起き上がることができなかった。

両足の膝の皿を破壊されていたからだ。

ガハっと老人が血でむせる。

 

その老人の元へ1人の男が歩いてきた。

全身黒い。黒いシャツに黒いズボン、黒い長髪は針金のように垂れ下がり、浅黒く焼けた肌は鈍い鉄のようだった。

剃刀で切って作ったような細く切れ長な目が、倒れている老人を見下ろしていた。

「やられたか兄者」

黒い男が老人に声をかける

「乂門がトーナメントに来てる…奴ら、遂に動くぞ…せいぜい死ぬなよ、八明」

倒れた老人、加賀七明がそう呟く。

その言葉を受け、地上最強の男、加賀八明はふらりと歩いていった。

彼が向かうのは決戦の地、日本武道館である。