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最強格闘家になろう 第四十話「準決勝へ その2」

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藤浪ドラゴンは会場の外にいた。

会場近く、小さな空き地を見つけそこにいた。

凍りつく様な寒さの中、藤浪は上半身裸で下も薄手のズボン一枚であった。

座禅を組み精神統一しているのである。

 

相手はあの矢吹晴男である。

不思議な男だった。先のハロウィンでは原龍徳、矢吹晴男、藤浪ドラゴンの三者は三つ巴の戦いを繰り広げた。あの時も一時的とは言え原と藤浪の戦いを止めている。それほどの強者である。

 

先の1回戦、2回戦も危ない場面はあったものの、結果だけ見れば圧倒的な力で勝利している。

 

万全の状態であれば、実力は五分か、僅かに藤浪の方が上だっただろう。

しかし、藤浪は先ほどの原との死闘により、全身を打ちのめされている。

 

俺は矢吹晴男に勝てるかのか…

脳裏に不安がよぎる。

いや、もう、考えるのはやめよう。

自分にできるのは、精神統一して準決勝に備えることだけだ。

藤浪は凍えそうな寒空の下、座禅を組む身体の隅々まで力を入れて来るべき戦いに備えた。

 

 

 

日本武道館、薄暗い通路に4人の男がいた。

3人はフードを目深に被り、1人はダランと全身から力が抜け、気絶している様に見える。

2人のフードの男が気を失っている男の両脇を、両足をそれぞれ抱えて運んでいる。

もう1人のフードの男はその後ろをゆったりと歩いている。

気絶している男は真島浩高であった。

乂門六代目棟梁、我山太一は思う。

 

「物事は常に計画通りに行くことはない、必ず障害があり、必ず予想外の出来事がある。だから100%の努力では足りない、120%、150%の準備をして初めて安心できる成功率を得られる。そろそろ来るはずだ

 

我山の後ろから足音が聞こえる。

 

振り返れば、加賀八明とスティーピーワンダーが立っていた。

 

「我山…魔門を置いて行ってもらおうか…」

「加賀…お前が来ることは分かっていた」

 

2人は睨み合う、2人の殺気が狭い通路の中で混ざり合い、ゆらめき、膨張していき、それは臨界点に達しようとしていた。

 

 

矢吹晴男は眠っていた。選手待合室である。

真島浩高から受けた打撃のダメージを少しでも抜く様に眠っているのである。

準決勝はあと30分で始まる。

男は夢を見ていた。

その夢はラブアンドピースの夢であった。

 

アメリカ合衆国と中国の二大強国が手を携え、核は廃止、北朝鮮と韓国は統一され、イランのISISは武器を捨てボランティア法人へと姿を変える。

そして、皆が地球温暖化について考える様になり、全世界から環境破壊が消える。

皆が青い星地球号の一員であり、差別はなくなり、手と手を携え21世紀を生きるのである。それは素晴らしい世界だった。

 

その平和な世界を宇宙空間から矢吹晴男は眺めていた。

 

「それは人間のエゴだわん」

ふと声が聞こえる。そこには犬がいた。

犬もまた宇宙空間をただよっているのだ。

「それは人間にとっての平和だわん」

 

ならば、どうすればいい?

 

「お前ら人間は動物という枠組みを超えたと驕り高ぶっているウッキー」

 

見れば猿もそこにいる

 

「お前ら人間は我々と同じ祖先から進化したただの哺乳類なんだチュー」

 

今度はネズミが晴男の足元を走り抜けていく。

 

「かつて、我々の祖先は爬虫類に捕食されて行ったんだわん…世界各地で龍の伝説があるのは遺伝子が爬虫類を恐れているからだわん」

 

犬が晴男に語りかける。

 

その時、地球が大きな口によって飲み込まれてしまった。

その口の主人は大きな大きな龍であった。

コズミックドラゴンが晴男を睨みつける。

 

「お前が俺に勝てると思っているのか!?」

その声は藤浪ドラゴンであった。

 

勝てるのか!?勝てるのか?勝てるさ…

矢吹晴男は拳を握りしめ、ドラゴンに立ち向かって行った。

 

準決勝は近い