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唐変木と猫娘 第1話「猫娘、唐変木と出会う」その2

目次

 

4.距離感近ッ!!!

図書委員の仕事が終わった頃、時刻は夜の18時になっていた。


「やっと、終わったね」


私は本を全て片付け終わり、図書室の受付カウンターに座る一ノ瀬に声をかけた。


「そうだな、おい、ちょっと」

 

そう言うと一ノ瀬はカウンターから出て、私のところまで歩いてきた。

一ノ瀬はどんどん私に近づいてくる。私は思わず後ずさった。

 

え?なに!?なに!?困惑する私を尻目にどんどん一ノ瀬は近づいてくる。

後ずさる。と、かかとが壁にぶつかる。続いて背中が。

一ノ瀬は尚もどんどん私に近づいてくる。一ノ瀬はじっと私の顔を覗き込んでくる。

もう、お互いの息がかかるくらいの距離だ。

 

一ノ瀬の顔がよく見える。

色白で目鼻筋が通っていて、申し分ない美形だ。え!?なに!?私、キスされるの!?

一ノ瀬顔はいいけどやばいやつじゃん…

 

私は確かに少しドキドキしちゃったけど、それ以上に一ノ瀬に対する警戒心が勝った。

いきなり女子の顔を至近距離から覗くなんて絶対ヤバいやつ!!!距離感やばい!!!

 

「お前…」

 

一ノ瀬が呟くと同時にするりと身体を滑らして逃げ出した。

 

「おい、ちょっと待て!!!」

 

後ろから一ノ瀬の声が聞こえるが無視して、図書室から飛び出した。

この時、一ノ瀬の言う通り止まっていればその後の人生も少し違っていたのかもしれない。

でも、今となってはもう遅いのだ。

 

 

5.狼男現る

私は夕日が差し込む廊下をほてほてと歩いていた。

 

咄嗟に図書室から飛び出したが、果たしてあれで正解だったのか?

そもそも一ノ瀬はなんと言おうとしたのだろうか?

 

1.ヤバい奴で私を襲おうとした

2.キスしようとした

3.顔に何かついてた

4.その他

 

まず、1.2は最悪のシュチュエーションだ。

でも、少ししか話していないが一ノ瀬はそう言うタイプではない様に思える。女の子に興味とか無さそうだし。

 

なら、3.4か…3ならあんなに顔近づけてくるか?一ノ瀬が人との距離感が異常に近い人種ならそれもありえるかも。

 

もしくは4.私に何か異常があって、それをマジマジと見ていた。

なんか一ノ瀬やたらと私の体調のこと気にしてたし、何か自分でも気付いていない異変が体に起こってるとか…?

 

その時、ふと、窓ガラスを見た。

窓ガラスの向こうでは野球部が練習してる。

そして、ガラスに写る私。私…私?

 

正解は4だったのだ。

 

私の頭から耳が生えている。

それはネコ科の耳だった。

それだけじゃない口元からは細い針金の様な髭が数本生えていた…

 

「にゃー!!!」

 

私は頭を抱えて叫んだ。

 

え!?何!?なに!?

どうなってなんの?なんで耳と髭生えてんの。

視界に毛むくじゃらの何かがちらつく。

毛むくじゃらを視線で追うと尾てい骨あたりから尻尾も生えている。

 

「これじゃ私、猫娘みたいじゃん…」

 

私はぺたりと床に座り込んでしまった。

 

 

6.猫娘爆誕

私が困惑の坩堝で思考回路がショート寸前になっている時、前から男子生徒が歩いてくるのが見えた。犬飼だった。

 

「犬飼!?私、私、猫になっちゃったみたい」

 

立ち上がって犬飼に言う。もうなにがなんだか分からない。

犬飼はそれに答えず、私を見据える。

その時、犬飼の異変に気がついた。犬飼の顔からどんどん毛が生えていく。

 

「ネコメナンデオレトハナシテクレナイノ?」

 

犬飼の鼻が鋭く尖り迫り上がる。口の中の歯がボロボロと落ちていき、歯茎から新しい鋭い犬歯が生えだす。

そして、肌が見える箇所、腕とか首元からも毛が生え始める。尖った耳が犬飼の頭からピョンと生えた。

犬飼の姿は映画とか漫画とかでよく見る、狼男そっくりになっていった。

身体もむくむくと大きくなり、着ていたシャツを破いた。

 

「な!?」

 

私はあまりの出来事にぺたりとまたへたり込んでしまった。

 

さっきからいろいろ起こりすぎだし、一体なんでこんなことになってるの!?

 

私は叫びたかったけど、叫び声すら出なかった。人って驚きすぎたり怖すぎると声出なくなるんだなぁ…なんてこんな状況で考えている自分になんだか笑えてきた。

 

怖い。

 

「ナンデハナシテクレナインダ!!!」

 

声の調子もおかしい。他の底から震える様な低い声だ。

 

犬飼が拳を振り上げる。大きな拳だ。私の頭くらいある。その先には鋭い爪が生えてる。

 

あ、私、死ぬんだ。

 

え、嘘、こんな訳わかんない死に方ある?

 

だって、まだまともに恋もしてないし、お母さんと最後になに話したかも覚えてないし、てか、私が死んだらお母さんとお父さんめちゃくちゃ悲しむだろうな。嫌だな、亜希子と泉水も泣くだろうな。一ノ瀬はどうかな?なんであいつのこと考えてんのかな?馬鹿みたい。

 

そんなことを考えている間に、犬飼の拳が私の腹を貫いた。

 

7.契約しよう

 

お腹に穴が空いても痛くないんだ。

犬飼の顔が私の顔に近づいてくる。今日はやたらと顔を近づけられる日だ。

犬飼って言っても狼男なんだけどね。

その目は黄色で瞳孔は開いており、一言で言うと死ぬほど怖い瞳だった。

え?語彙力が皆無?だって仕方ないじゃん、私死にかけてるんだし。

てか、食べられるのかな、あ、犬飼が口開いた。やっぱり食べられるんだ。

狼男に食べられるなんて、そんな死に方私想像すらしてなかったよ。

 

犬飼が私に噛みつこうとした時、犬飼は廊下の向こうを凝視した。何かに気がついたのだ。でも、私はその何かを顔を上げて確認できるほどの気力もない。

私は廊下に大の字で寝っ転がり、腹から血が溢れだすのをただ眺めるしか出来なかった。

 

犬飼はなぜか後退り、私を食べないでいてくれた。犬飼のドシドシと言う走る音が床を通じて聞こえてくる。

 

私、食べられなくて済んだんだ。

死ぬとしても狼に食べられるのはごめんだからほっとした。

その時、なんだか急に涙が溢れてきた。

死ぬんだ私。痛くないのが唯一の救いだった。

 

ポロポロと涙が溢れる。

 

「おい、大丈夫…じゃないな」

 

一ノ瀬の声が聞こえる。でも、もう、視界がぼやけてハッキリ見えない。血を流しすぎたんだ。どんどん身体も冷えてきた。寒くて仕方がない。

 

「おい、猫目、生きたいか?」

 

「生きたいに決まってんじゃん」

 

「なら、俺と契約しろ」

 

「なに…」

 

「契約すると言うんだ」

 

なんだか、質の悪いアニメみたいな展開。

でも、もう少しで意識が飛びそう

藁にすがる思いってこう言うこと言うんだ

 

「契約する…」

 

私はそう言うと同時に意識を失った。

 

8.いざいかん

 

目が覚めると、私の目の前には一ノ瀬が立っていた。もう、あたりは真っ暗だ。

 

「説明を要求する!!!」

私は飛び起きて一ノ瀬に詰め寄った。

 

「時間がない、向かいながら説明する」

 

「どこに!?」

 

「さっきの化け物の匂いを嗅げ、追うぞ」

 

「そんなの、分かるわけ…」

 

分かる…はっきりと嗅ぎとれる。まるで匂いの道が目の前に広がっている、手に取るように分かる。

 

「なんでぇー!!!」

 

「行くぞ」

 

そう言うと、一ノ瀬は私の背中におぶさってきた。なに!?こいつ!?失礼過ぎない!?

 

「ちょ!!!重いって…え、重くない…」

 

まるで体重を感じなかった。まさか一ノ瀬ってすごく痩せてる?

 

「重くないだろ、行くぞ!!」

 

「行くって!?あの化け物のところへ?」

 

「馬鹿他にどこ行くんだよ、とにかく説明はあと!!!窓から飛べ」

 

「え、ここ2階だよ??」

 

「混乱してるのはとてもよく分かる。でも今は騙されたと思って二階から思いっきり飛べ」

 

もう、訳わかんない…でも言う通りにするしかないよね…わたしは窓を開け、思い切り飛び出した。

 

そしたら、わたしの体が思い切り空に飛び上がった。嘘、とんでもないジャンプ力!!!

 

「屋根を伝って行け!!!」

 

私の上で一ノ瀬が叫んだ。

 

8.質問したいです

 

「質問したいです!!!」

 

「いいだろう!!!」

 

私たちは風のように街を駆け抜け、化け物の匂いを追った。

 

「一ノ瀬って何者?あの化け物って何?私に何が起こったの?」

 

「手短に話そう、俺は陰陽師。聞いたことくらいあるだろ?俺の家は大昔からああ言う化け物と戦っている」

 

「一ノ瀬、アニメの見過ぎじゃない?」

 

にわかには信じがたい。

 

「信じろよ…それで、あんたは妖怪化け猫の子孫!!!」

 

「全然なにいってるか分からない!?私のお父さん公務員なんだけど!?」

 

「隔世遺伝だよ!!!大昔の妖怪の血が目覚めたんだ。確率で言うととんでもなく低い確率なんだけどな。だから、俺はあんたのことずっと気にかけてたんだ。ほら、後でちゃんと説明するから!!!前見て」

 

私は電柱にぶつかりそうになるのを身を屈めて避ける。そして、また屋根を蹴ると空に飛び上がる。スゴイ身体能力!!!

 

「じゃあ、あの化け物は何?悪い妖怪?」

 

「違う、妖怪は今となっては全員地味に平和に生きてる!!!あれは鬼だ!!!」

 

「鬼ぃい!?」

 

「鬼ってのは人の負の感情が高まった時産まれる人でも妖怪でもない化け物だ!!!生き霊とか聞いたことあるだろ!?あれだよ」

 

「じゃあ、あれは犬飼の負の感情の塊!?」

 

「お、飲み込み早いな…その通り」

 

「私のこと、嫌いだったのかな…」

 

「違う、人の感情で一番怖いのは愛情なんだ。可愛さ余って憎さ100倍だな…好きが転じた時が一番怖いんだよ…今回は、まぁ、あんたが無視し過ぎて犬飼が愛情拗らせた訳だな」

 

じゃあ…私が悪いわけじゃん…

私、自分のことしか考えてなかった。周りばっかり気にして、犬飼のこと無視して、傷つけてたんじゃん…

 

「ん…そういや、私の腹に空いた穴は?」

 

「その説明もまた後!!!ほら!!!見つけた!!!」

 

 

9.鬼退治

 

屋根の上から、人気のない路地を走る狼男を見つけた。狼男、私ほどじゃないけど早い!!!

狼男は路地を縫うように走り抜けている。

 

「どうしよう!?どうしたらいい!?」

 

「俺をあいつめがけてぶん投げろ!!!」

 

視界にきらりと光何かが見えた。それを視線で追いかけると、一ノ瀬は手に刀を持っていた。

日本刀とはまた違う、両刀の剣だ。

どこから出してきたの!?危ない!!!

 

「ぶん投げていいの?危なくない?」

 

「危なくない!!!いいから早く、思い切りぶん投げろ」

 

「もう、どうなっても知らないよ!!!」

 

私は一ノ瀬の身体をひょいと持ち上げると、ボールを投げる要領でポンと狼男に向かって投げつけた。

 

一ノ瀬が弾丸のように狼男に飛んでいく。

 

一ノ瀬ロケットだ!!!って私何馬鹿なこと考えてんだろ。

 

狼男がこちらを振り返る。その時にはもう遅い、眼前には刀を持った一ノ瀬。

一ノ瀬の刃が真一文字に狼男男を真っ二つに切断した。狼男の身体が灰の様に崩れ落ちていく。

 

ゴロゴロゴロと一ノ瀬は地面を転がっていき、ゴミ捨て場のゴミに突き刺さり止まった。

 

私は一ノ瀬に走り寄る。

 

「大丈夫!?一ノ瀬?」

 

「大丈夫だ」

 

スポンと一ノ瀬がゴミから頭を引き抜くと、彼の頭にはバナナの皮がへばりついていた。

 

「汚い!!!」

 

眼前では狼男の身体は崩れ落ち、灰になって風に乗り、空へと消えていった。

 

「ねぇ、これって犬飼に影響とかないの?」

 

「全くない!!!これだけ人に迷惑をかけて腹立たしい…所詮、鬼は人の負の感情が具現化した存在だから、物体となった時、産み出した人間とは全く無関係なのだ」

 

ふっ…と一ノ瀬は息を吐いた。

 

「これにて一件落着だな…疲れた…詳しくはまた明日話すよ」

 

そう言うと一ノ瀬は歩き始めた。

 

「ちょっと、え、待ってよ」

 

「今日はもう遅い、親御さんが心配するぞ、それにいろいろあって疲れたろ?」

 

確かに一ノ瀬の言う通りだ。街灯のない路地裏で私はペチャリとへたり込んでしまった。

人生で一番疲れたかも。ん、頭を触ってみる。耳が無くなってる!!!

 

「力を使い果たしたんだろう…あと、犬飼との件、はっきりさせろよ…また鬼が出たら敵わん」

 

「分かってるよ…あのさ、一ノ瀬…」

 

「なに…?」

 

「足腰立たないの…おんぶして…?」

 

「はぁ!?」

 

「さっきまで私の背中にいたじゃん」

 

一ノ瀬はもぉお!!!と頭をボリボリとかいたあと、しゃがみ込み、背中をこちらに向けてくれた。

私はノシリ!と一ノ瀬の背中に全身を預けた。

 

今日はいろいろあったな…あり過ぎたな…明日一ノ瀬からちゃんと話聞かなきゃな…

それにしても一ノ瀬は案外身体デカいな…もっとひょろっとしてると思ってたんだけど…

なんだか、私は安心して眠くなってしまった。

 

「一ノ瀬…」

 

「なんだ!?」

 

一ノ瀬が不機嫌そうに言う。

こいつなんだかんだ言いながら私のことおんぶしてくれるなんていい奴じゃん。

 

「一ノ瀬の頭…臭い…」

 

「仕方ないだろ…生ゴミに突っ込んだんだから…おい、家の住所教えろ」

 

ふふふ…なんだか、私、笑えてきた。

訳わかんない状況だけど…

私はそのまま眠りについた。

 

10.その後

 

翌日、私は昼休みに犬飼に呼び出された。

 

昼の間、人通りの少ない渡り廊下だった。

私がそこに行くと、犬飼は意を決したようにこちらを見据えていた。

 

「あのさ、猫目…」

 

11.鬼退治は続く

 

「で、うまい具合に振ったと」

 

図書室のカウンターの中で頬杖をつきながら、一ノ瀬は私に言った。

 

「変な言い方しないでよ、私はただ、今は恋愛とか興味ないって言っただけ」

 

私は一ノ瀬に反論しながら、両手一杯に持った本を片付ける。

 

「じゃあ、そろそろ行くか」

 

一ノ瀬がパンと手を叩いて立ち上がった。

 

「どこに?」

 

「え、言ってなかったっけ?鬼退治」

 

「全く聞いてない、初耳」

 

あー…と一ノ瀬は1人ふむふむと顎に手をやっている。

 

「どーしたのよ?」

 

「いや、腹の傷治った理由について説明してなかったっけ?」

 

「まったく、昨日眠いからって帰ったじゃん」

 

「陰陽師にはな、式神の術と言って、自分の力を妖怪に分け与えることが出来る術があるんだ。この術を用いて妖怪とバディを組んで鬼と戦う訳だな」

 

「もしかして、昨日の契約ってそれ?なら契約破棄!!!リコール!!!クーリングオフ!!」

 

「出来ない、一回契約すると3年は契約が切れない術なんだ。だから、猫目はこれから3年間は俺の言うことを聞く式神となってもらう…」

 

「にゃー!!!それって断れないの?」

 

「断ると契約が切れて、大変なことになる」

 

「どうなるの?」

 

「いままで断った妖怪がいないから俺もよくわからん」

 

「にゃー!!!」

 

私は頭を抱えて絶叫した。

そんな私のことをこの唐変木はニヤニヤと笑って見ている。

 

「よろしくな、猫目瞳」

 

一ノ瀬はからかうようにそう言った。

 

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一話書き終わった!!!

 

「最強格闘家になろう」も絶賛掲載中なんでよかったら読んでくだされ。