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最強格闘家になろう 第五十一話「第一試合」

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 選手控室。そこにも会場のざわめきは届いていた。神妙な面持ちで6人の男達が決戦の時を待っている。加賀八明、スティーピーワンダー、ドラゴン藤浪、山口タッカーシー、吉岡清一郎、原龍徳である。

 

 遡ること数年前、トーナメント終了直後、乂門は日本征服に乗り出し、日本全土が無法地帯となりつつあった。そんな中、加賀はこの5人の男達を秘密裏に集め、通称『鬼ヶ島』と呼ばれる無人島に送り込んでいたのであった。

 

 「こんなところまで連れてきて何するつもりだよ」

    鬼ヶ島の砂浜で5人の男達は加賀を中心に円になって立っていた。

 「この5人は対乂門の精鋭部隊となってもらう」

    加賀が静かにそう言った。

 「確かに、乂門の構成員の数は多い。一人で戦えばすぐにやられるだろう。俺たちが結託するのはいいアイデアだと思う」

    ドラゴン藤浪がそう言った。

 「しかし、なんで、矢吹晴男はいないのだ!?」

     矢吹晴男、トーナメント3位の豪傑。そしてこの物語の主人公である。

 「晴男には特別な任務を与えている」

   加賀はそう言って、5人を見渡した。

 「お前達にはここで修行をしてもらうぞ、乂門を打ち倒す実力をつけてもらう。お前達は強い。しかし、まだ発展途上の強さだ。あのトーナメントで伸び代がまだある5人を連れてきた」

    5人は黙して加賀の言葉を聞いていた。皆、心は一つだった。打倒乂門。

 皆、乂門によって生活を破壊されていたのだった。

 ドラゴン藤浪は愛する車を乂門によって破壊され、山口タッカーシーは自身のサンボ道場を乂門に潰され、吉岡清一郎は乂門が日本の教育制度を破壊したことで職を失い、原龍徳は乂門がハロウィンを禁止した為に暴れられなくなっていた。

 乂門憎しで集まった5人は打倒乂門を誓ったのであった。

 

 地獄コロシアムでは第一回戦が始まろうとしていた。控室から男が飛び出してきた。

 いがぐり頭に四角い顎、鋭い目つきをした男。その身体は岩の様に鍛え上げられていた。

 男はボクサーパンツ一枚だった。その男の名は…原龍徳。

 

 そして、反対側、乂門側の控え室からも男が出てきた。その男は黒い肌に天然パーマ、ふくよかな頬を持ち、眼鏡のレンズの奥に光る眼光は知的な印象を受ける。スーツに身を包んだこの男の名は…悪役プロレスラー軍団wHoのリーダー…デドロズ

 

体格的には共に180センチ弱と大柄であった。

共にコロシアム中央で睨み合う。

 

対抗戦のルールは簡単であった。

砂を敷き詰められただけの地獄コロシアム。

そこには場外と言う概念はない。

動かなくなった方の負けという至極シンプルなルールであった。

 

いざ、決戦の時。

戦いの開始を告げるドラが鳴った。

会場の民衆は雄叫びを上げた。

 

  「まさか、デドロズまで乂門の軍門に下っていたとは…」

  控室で苦々しい表情をドラゴン藤浪が浮かべた。

 「なんだ?あの男…有名なのか?」

  吉岡清一郎が顎をさすりながらぼやいた。

 「有名なんてものじゃない」

   山口が言う。

 「デドロズは中国が母体の悪役プロレスラー団体wHoのリーダーですよ。あいつらは死人が出るほどの無責任拷問ファイトで有名だったのですが、まさかそのリーダーが乂門のメンバーになっていたとは…原さんには少し荷が重いのでは…?」

    山口は心配そうに会場の原を見つめていた。

 

 「お前、有名人らしいな」

    原は十分に間合いを取り、両腕を上げて構えた。

 「危機感を持て…俺の攻撃に備えて集中しろ…」

   デドロズもまた足を半端出して構えた。

 と同時にアンダースロー気味にデドロズの拳が地面に向かって弾き出された。

 おいおい、間合いが遠いぜ…原は冷静に分析をしていた。この距離から当たるはずがない。動じずに冷静に対処しろ。所詮プロレスラーの打撃だ。

 しかし、デドロズの狙いは違った。デドロズの拳が砂をえぐる。そして、その拳は一転、空に向かってアッパー気味に駆け上がる。そのせいで、砂は舞い上がり、砂煙が原を襲った。

 しまった。そう思った時には手遅れだった。原の視界を砂が覆っていた。

 どこだ?どこにいる?原が中腰になり身構える。その時、後ろから声がした。

 「想定の範囲内だ」

   その瞬間、原の首にデドロズの硬い腕が巻きついた。裸締めである。

 デドロズの腕が締まっていく…

   「安心しろ…致死率は2%だ…」

  デドロズが笑いながらそう言う。

 

 「まずいですよ!!!原さんが死にます!!!」

    控室で山口が叫んだ。

 「…安心しろ原はこのまま負けるほど柔な奴ではない…」

 ドラゴン藤浪が冷静にそう言った。

 

 その通りであった。締め上げられている原は笑っていた。

 見せてやるぜ…俺のハロウィンを!!!