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『Summer とある根暗な青年』

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 ひっそりと地味に俺の夏が終わった。

 思えば、中学も含めて6年間よくやったもんだ。

 俺は今走り終わったレーンを見つめながら思った。4着。タイム的に準決勝に進むことは不可能だろう。

 100mを走り終わるのはいつも一瞬だった。大の男が0.01秒にこだわって馬鹿みたいに暑い走るなんて下らねえ。

 下らねえと思いながらも、我ながらよく続いたものだと思う。

 後輩達から尊敬もされず、部活に親しい友人もおらず、可愛がってくれる先輩もおらず、努力してもいい成績は残せず、リレーのメンバーからはいつも落選し、顧問に目をかけられず、腐りながらもなんとかやってきた。

 それが今、やっと終わった。俺はちゃっちゃとスパイクを脱いで、スニーカーに履き替えた。俺は少し迷ってからスパイクを近くにあったゴミ箱の中に投げ捨てた。

 

 ベンチに戻ると俺に気がついた後輩たち数人が『おつかれーす』と気のない挨拶をしてきた。

 俺はそれを無視して、自分のバッグを取ると、トイレに向かった。トイレの中でユニフォームからジャージに着替えた。

 ユニフォームもトイレの近くのゴミ箱に捨てた。

 全部捨ててしまうと晴れやかな気分になった。俺はベンチには戻らず、チャリンコにまたがって陸上競技場を後にした。

 誰も俺がいなくなったことになど気付きまい。俺は三流選手だったし、しかも今日で引退なのだ。最後ぐらい自由にさせてくれ。

 

 チャリンコに乗って街を走ると風が気持ち良かった。

 ジリジリと鳴くセミ、陽炎が揺れるアスファルト、パンツが見えそうなくらい短いスカートを履いた女子高生の群れ。

 腹が減ったのでマックに入って、ビッグマックセットを頼んだ。

 大会を抜け出して、涼しいマックに行くと言う行為に俺は高揚していた。

 クーラーが効いて涼しい店内で頬張るビッグマックは無類の美味さだった。

 店内まで聞こえてくるジリジリと鳴くセミ、店内から見える陽炎が揺れるアスファルト、パンツが見えそうなくらい短いスカートを履いた女子高生の群れ、照りつける太陽。

 俺はそんな光景を眺めていたら、涙が次から次へと溢れてきた。口の端からパン屑がこぼれ落ちた。隣の席に座っている若い女の人が訝しげに俺を見つめている。

 持っていたハンバーガーを握りつぶす。嗚咽とパン屑が口の端から溢れ、涙が溢れ、鼻水が垂れ、顔をぐしゃぐしゃに歪めて泣いた。

 俺の夏が終わった。セミの声がやけにうるさかった。