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最強格闘家になろう第66話「FAKE」

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ラウェイとは…

タイの古式ムエタイにおける「ムエカッチュアー」、近代ムエタイとの差異としては、拳にはグローブを着用せずバンデージのみを巻き、寝技以外の関節技(卍固めなど)や、投げ技、頭突き攻撃、金的攻撃(故意では無い場合のみ)が認められる点が挙げられる。

 

つまり、立業界のバーリトゥド(なんでもあり)である。

 

佐村河内責。齢53歳。

ミャンマーで生を受ける。

物心ついた頃、ラウェイのカリスマ、アーラーガッキーの元で修行を積む。

佐村河内が20歳の頃だった。

 

ある日、アーラーガッキーは門下生が帰ったあとのリングで1人シャドーをしていた。

虚空に敵を思い浮かべて、拳を足を振り続ける。

 

すると、アーラーガッキーの眼前には1人のファイターが浮かび上がってくる。

そのファイターと死闘を演じるのである。

これぞシャドーファイトのかくあるべき姿である。

 

ふふふ…

 

笑い声が聞こえた。

アーラーガッキーがその方向を見やると、佐村河内がいた。

 

「佐村河内、一体何をしている?」

 

「いやー、免許皆伝を貰おうと思いましてね…」

 

「つまり?」

 

「師匠超えしちゃおうかなって…」

 

「みくびるなよ…佐村河内」

 

アーラーガッキー、その時43歳。体力のピークは過ぎたがまだまだ現役であった。

いや、若い頃の荒々しさが抜け、技も円熟の域に達し、総合的には万全のコンディションであった。

 

一方、佐村河内。モジャモジャの髪と髭を蓄えた無頼漢である。確かに若手の中では強いが、まだまだアーラーガッキーには及ばないレベルである。

 

「で、どうする?ゴングは?ルールは?」

 

アーラーガッキーが目線を切り、ジムのタイマーを一瞬見た、その時であった。

もう一度目線を佐村河内に戻す、その瞬間には彼はリングに上がり、間合いを詰め、アーラーガッキーの眼前に立っていた。

次の瞬間には佐村河内の左フックがアーラーガッキーの顎を捉えた。

負けじと両手で掌底を繰り出したアーラーガッキー。

その両手が佐村河内の耳を捉えた。

 

佐村河内の両鼓膜破裂。

 

しかし、左フックが突き刺さったアーラーガッキーの脳はシェイクされ、脳震盪を起こしていた。

 

倒れ込むアーラーガッキー。

 

「卑怯な…」

 

アーラーガッキーが漏れるような声で呟く。

 

佐村河内は足をあげて、アーラーガッキーの顔を踏み抜いた。

 

「武人同士の戦いで卑怯もクソもないでしょ…先生」

 

佐村河内、免許皆伝の瞬間である。

その後、彼は全聾の天才音楽家として名を馳せる事になるが、その裏の顔はミャンマー裏格闘技界のトップであった。

 

 

 

 

佐村河内の頭突きで折れ曲がった左拳を眺めてスティーピーは笑った。

その顔には狂気の色が浮かんでいた。

 

「キクネェー…」

 

佐村河内も笑っていた。

 

放たれた全盲の天才と全聾の天才の闘気、それが混じり合い、濃縮されにされ、膨張し、限界まで達し、破裂した瞬間、2人は弾き出された弾丸のように動き出した。

 

スティーピーの右手で繰り出された最速拳が佐村河内の鳩尾に突き刺さる。と同時にスティーピーの両耳に佐村河内の両手で繰り出された掌底が突き刺さった。

 

奇しくも師アーラーガッキーが最後に放った技である。

 

スティーピーの両鼓膜が破裂。

 

これにより、スティーピーは左拳だけでなく、聴力も失うことになった。

 

佐村河内が激痛のあまり身体をくの字に折り曲げる。しかし、倒れない。その顔には勝利を確信した笑みが張り付いていた。

 

一方のスティーピーは片膝をつき、折れていない右手を空に突き出していた。

探るように、突き出した右手でもがくスティーピー。

 

全盲の彼は頼りにする聴力も無くなり、絶体絶命である。感覚のほとんどを失ったのであった。

 

「スティーピー、次の一撃がお前に捧げる

レクイエムだ…まぁ、この声も聞こえてないだろうがな…」

 

佐村河内の右ミドルキックが真っ直ぐにスティーピーの顔面に向かって放たれた。

しかし、その瞬間である。スティーピーは立ち上がり、その勢いで右手でアッパーを放った。

それが佐村河内の顎を正確に捉えた。

 

佐村河内責、顎粉砕骨折。

 

ぶっ倒れる佐村河内、それを見下ろすスティーピー。

 

「ふぁ…ふぁんで…?(な…なんで…?)」

 

顎が折れたせいで佐村河内の声がくぐもる。

 

「ナンデッテ…ナンデメモミエナイ、コエモキコエナイノニ、アゴヲウチヌケタッテ?ソリャア…」

 

スティーピーがサングラスを取る。

そこには、ハッキリと両方の目が見開かれていた。

 

「ゼンモウツーノハナ…fakeダカラダヨ…マサカ、ヒキョウトハイウマイネ?」

 

「ふぁあ…ほぉれのまけら(ああ…俺の負けだ)」

 

佐村河内は笑った。次の瞬間、スティーピーの下段蹴りが佐村河内の顔面に突き刺さった。

 

副将戦。勝者、

スティーピーワンダー