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真・最強格闘家になろう 第二話「超進塾」

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日本、いや、世界最大規模の空手塾、

『超進塾』

過去、猫田戦やガンギマリ敬之も所属していたその空手界の虎達が掲げるスローガン。

 

それが

『超進塾は最強たれ』

 

それを実直守り続けてきた男たち。

日本最大最強の武力集団。

それが超進塾である。

 

その超進塾総本部ビルの館長室。

そこには応接用のソファとテーブル以外はベンチプレス、サンドバックがあるのみであった。

異様な光景である。

そこに一人の男がいる。

横たわり、ベンチプレスを上げている。

見ると、その重さは200キロである。常人にはまず持ち上げることは不可能な重さだ。

 

それを軽々と男は何度も上げている。

見ると、男は上半身裸で下は道着を着ている。

筋骨隆々。肥大化したそれはボディビルのような美しさはなく、ただゴツゴツとし岩のようである。

 

その男は太かった。どこが?と言われれば、全身がである。太い指、太い胸筋、太い腹筋、太い太もも、太い首、鼻もそして眉も。全身くまなく筋肉がついていた。

 

この男こそ、世界塾生数60万人の超進塾塾長、

『陀羅尼(だらに)太(ふとし)』齢60歳である。

 

陀羅尼太。格闘技をかじった事のある人間で彼の名を知らぬ者はいない。

彼にはさまざまな伝説がある。

曰く牛を素手で殺した。曰く100人を相手取り倒した。曰く暴力団を壊滅させた。

生きる伝説である。

加賀達喧嘩凸トーナメントファイター達を裏格闘技界の雄と呼ぶのなら、陀羅尼太は表格闘技界の帝王である。

 

そして、陀羅尼の隣には一人の男が立っている。

 

長髪の美男子である。

肌が女のように白く、またその顔も美形であり、その長身と広い肩幅がなければモデルと言われても信じてしまう見た目であった。

 

彼の名は『花木 薫』

超進塾トーナメント2位の実力者にして筆頭塾生として、陀羅尼太の秘書兼付き人である。

 

「花木ぃいいい…もう一回言ってみろや」

 

「はい、塾長。私を含む4人の退塾をお認め頂きたい」

 

そう言うと花木は半紙を道着の胸元から取り出した。

 

そこには退塾届けと大きく書かれており、4人の名前と名前の下には血判が押されていた。

 

男達の名前は以下の通りである。

花木 薫

佐山 大海

矢部 二郎

下衆際 矢場男

 

 

「おいおい、こりゃ超進の主力級達じゃねえか…おめえら、うち抜けて何しようってんだい?」

 

陀羅尼太は起き上がり、テーブルの上に置いてあったウィスキーを手に取った。

陀羅尼はウィスキーの注ぎ口にサッと手刀を加える。すると、スパリと瓶は切れた。

50度はあろうかと言うウィスキーを陀羅尼は一息で飲み干す。

 

花木は陀羅尼の問いかけには答えず、ただ口元の端を吊り上げて笑った。

 

「加賀流だな」

 

プハっと陀羅尼はウィスキーの香りが混じったゲップを吐き出しながらそう言った。

 

「その通りです」

 

花木は笑った。

 

「超進唯一の鉄の掟、それが『超進塾は最強たれ』。しかし、先の乂門騒動を加賀流が片付けてからと言うもの、世間一般の最強の概念は加賀流になってしまいました。それが我々には我慢出来んのです」

 

「おい、加賀流にだけは手ぇ出すなって俺が言ってるのは知ってるよな?」

 

陀羅尼太はソファにどかりと座った。

すると、彼は自らの右目に手をやった。

彼は人差し指を眼窩に差し込んでえぐり、右目をコロリと取り出したのである。

 

「義眼だ。これは加賀流前当主である加賀六助との戦いで奪われたもんだ。あれはな、試合なんて言う生優しいもんじゃねえ…殺し合いよ…加賀流に手を出すってことは加賀流と超進が最後の1人になるまで殺し合うってことなんだぜ…そりゃお前、戦争だ。俺は戦争は起こせねえよ」

 

「それ故の退塾です」

花木の口調からは確固たる決意が感じられた。

つまり、全責任は超進ではなく、自分達が取ると言うことである。

 

「決死隊ってわけか…」

 

「ええ、4人とも生きて帰れるとは思っておりません。これより、我々4人は加賀八明と矢吹晴男の首を討ち取る事のみの為に命を捧げる所存です」

 

「そこまでの覚悟か…」

 

「塾長…初めて命に背くことお許しください」

 

「分かった」

 

そう言うと、血判状を陀羅尼は受け取った。

 

「本日をもって、花木薫、佐山大海、矢部二郎、下衆際矢場男、4名の退塾を認める。しかし、退塾は加賀八明と矢吹晴男の存命期間に限る。これが条件だ」

 

「塾長…!!!」

 

「2人の首…もってこいや…」

 

「押忍ッッ!!!」

 

花木は陀羅尼に一礼して館長室を後にした。

 

花木はすぐさま3人に電話をかけた。

 

 

「館長が認められたか!!!」

 

連絡を受けた下衆際矢場男は叫んだ。

下衆際は目は釣り上がり、頭は短く刈り込んでいて、口は大きい。

長身でよく絞り込まれた身体をしていた。

 

「ああ、加賀と矢吹の首を持って帰ってこいとさ」

 

「ギャハハハハ!!!腕がなるぜ!!!」

 

下衆際は笑った。彼は今ランチを楽しんでいた。スーパーの試食品コーナーでおばちゃんを脅迫し、試食品のウィンナーを全て平らげていたのである。

 

「ねぇ、お兄さん…勘弁してよぉ」

 

スーパーのおばちゃんが泣き出しそうな声でそう言う。

 

「うるせえ…次はフルーツもってこいや…オラァ…」

 

下衆際矢場男。超進塾トーナメント4位の実力者である。黒い噂が絶えないことから通称『悪童』と呼ばれている。

 

 

 

「やっと…この時が来ましたか…」

次に花木から連絡を受けたのは矢部二郎であった。

 

矢部は幼年部の子供達にも熱心に空手を教えている優しい男だ。身長は低く、細身であるが、粘り強い空手が持ち味で超進トーナメント3位の実力者である。

 

一見すると大人しい、弱々しい青年に見える。

 

彼は彼の住むアパートの大家さんである老婦人と仲良しでよく彼女とお茶をする。

 

花木から連絡を受けた時も老婦人と午後のお茶を楽しんでいた時であった。

 

「矢部さん…いかれるのですね…」

 

老婦人は矢部に語りかけた。

 

「はい、もう戻ってこないかもしれません…」

 

矢部はお茶をひとすすりした。

 

矢部二郎。通称『巨木』、推参の時である。

 

 

 

「わかった…」

 

花木からの連絡を受け、佐山は短くそう言うと携帯を切った。

 

佐山大海(たいかい)は中肉中背である。

特にこれと言った特徴のない男であった。

顔は切れ長で、浅黒かった。

普通。十人並みの見た目である。

しかし、それは彼を正面から見た時に限る。

後ろから見たとき、彼の肥大化したヒッティングマッスルは異常としか言いようがなかった。

 

彼は今、超進塾支部のとある道場に1人いる。

彼の目の前には戸板に置かれた巻藁がひとつあるのみである。

 

腰を落とし、右手を引く、左手で狙いを定める。呼吸を意識する。吸う、吐く、吸う、今!

 

右手を思い切り巻藁に叩きつける。

 

正拳突きである。巻藁と拳がぶつかる。ゴッと言う音が道場に響き渡る。

 

彼はこれを1日に1000回行う。

 

佐山大海。トーナメント1位の男。今現在、現役空手家の中で最強の男である。

 

「加賀…か」

 

佐山は呟いた。

 

通称『菩薩』。佐山大海の空手が解禁されたときである。