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真・最強格闘家になろう 第六話「二度目の逮捕」

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楊 梁が4つの団体の男たちについて語り終えた時、加賀八明はふっとため息をついた。

 

「ならほど…つまり、俺は四面楚歌ってわけか」

 

「その通りだ。幾らお前でもこれだけのメンツを一度に相手出来まい。昔馴染みのよしみだ。少しの間匿ってやろうか?」

 

楊 梁がそう言うと、加賀八明はピタリと止まった。そして、笑った。その笑顔はこの世の凶事を全て内包した様な底知れない歪な笑みであった。

 

「楊 梁、俺が負けると思ってるのかい?」

 

楊 梁は思わず、手に持っていた湯飲みを落としそうになった。

確かに、この男が誰かに負ける姿など想像できない…しかし…

 

そう思っていた時に、応接間の扉をノックする音が響いた。

 

「そろそろ来ると思っていたが…」

 

加賀八明はそう言ってニヤリと笑った。

 

扉が開くと、数人の警察官がそこにいた。

 

「加賀八明…お前は違法な額の受講料を塾生から取っていると聞いた。しかも、脱税の疑いもある。暑まで来てもらおうか…」

 

ふふふ…と加賀は笑い立ち上がった。そして、その手に手錠がかけられた。

 

「どうやら匿ってもらう必要はなくなった様だな」

 

楊 梁を見てそう笑った。そして、楊 梁は笑うしかなかった。

 

おら!!!歩け!!!この詐欺師が!!!

楊 梁はそう若手警官に言われながら歩いていく加賀をただ後ろから見つめるだけであった。

 

 

ところ変わって加賀八明道場がある地方都市。都市の中心地にある最大のターミナル駅に4人の男たちはいた。

男達は駅から出て、人でごった返すタクシー乗り場の近くにあるベンチに腰を下ろしている。

 

花木薫

佐山大海

矢部二郎

下衆際矢場男

 

である。

 

「どれ、せっかくだし、観光も兼ねて、名物のエビフライでも食いにいくか?」

 

そう言って下衆際は笑った。

 

この4人、花木、佐山は同期、下衆際は花木達の2年後輩、矢部は1年先輩と歳が近く、4人は幼年部から同じ道場で汗をながし、同じ釜の飯を食った竹馬の友であった。

4人が4人とも突出した才能を見せ、今ではそれぞれ道場の師範代をしている。

 

「下衆際さんの言う通り、腹が減っては何とやら、ご飯でも食べに行きますか…」

 

花木がそう言うと4人は近くの定食屋に行った。

 

4人が入ったのは古ぼけた定食屋であった。

老夫婦が2人で営んでいる小さな定食屋。

こう言うところのが美味いんだよなと下衆際が決めたのであった。

カウンターに1人の老人がいるだけでそれ以外客は花木達4人だけであった。

 

「さて、どうやって加賀と矢吹の首をとる?」

 

エビフライ定食をかき込みながら花木が皆にそう言った。

4人で集まるといつも花木が話の中心になる。下衆際が茶化し、佐山が優しく笑い、矢部が同調し、花木がまとめる。それがこの4人の常である。

 

「普通に考えれば加賀は道場にいるだろう。矢吹の居場所はわからんが、師匠が倒されれば出てくるさ」

 

佐山が味噌汁をすすり、そう言った。

 

ならば、正攻法で道場に行くかとなった時、下衆際がはぁとため息をついた。

 

「先輩方は昔から甘いなぁ…よしんば加賀をぶちのめしても道場なら塾生達が俺らの事五体満足に返さんでしょ。塾長は俺らに首とったら帰ってこいって言うとるんでしょ?ならキッチリと自分の足で帰らんと」

 

「なら、下衆際はどうすべきだと思う?」

花木が聞く。

 

「闇討ちしかないでしょ。武人なら卑怯とは言わなんだろ」

 

「俺は賛成しかねる」

 

佐山がキッパリとした口調で言った。

 

「加賀を倒した後、もしも塾生が襲ってきたら1人残らず叩きのめす。これが超進だ」

 

下衆際がボリボリと頭を掻きながら面倒臭そうに欠伸した。

 

「…ぼ…僕は下衆際くんに賛成です…4人で殴り込みなんて…げ…現実的じゃない」

 

オドオドとした口調で矢部がそう言う。

 

「ではこうしてはいかがでしょう?」

 

花木が手を打って皆を注目させる。

 

「4人で固まって行動するのではなく、各々が各々の方法で加賀を狩る。大人数相手には固まっているよりもゲリラ戦の方が有効。それよりも、なによりも…」

 

花木がそこで言葉を切り、ニヤリと笑った。

 

「ここにいる4人とも我こそが加賀を倒さんと思っているでしょ?なら下手に協力するよりも、競争した方が建設的…」

 

なるほど、それは良い案だと他の3人はうなづいた。

 

戦力を分散することになれど、不安がる者は0人。4人が4人とも己の武に絶大な自信があるからこその結論であった。