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真・最強格闘家になろう 第八話「強襲」

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ここはとある地方都市の繁華街の一角。

道には提灯や看板が立ち並ぶ飲み屋街である。

 

そのうちの1つ。安くて早い雑多な居酒屋。若い客が多い。賑わう居酒屋、その2階で4人の男は酒を酌み交わしていた。

 

「だから、いたんですよ!!!本当に宇宙人は!!!」

 

そう語るのは小太りの眼鏡男子。山口・サンドロヴィッチ・タッカーシーであった。

 

サンボの達人である彼は乂門との対抗戦の最中UFOに連れ去られてしまったが、最近、山中で発見され、とある病院に入院させられていたが、ようやく退院したところであった。

 

「嘘くせえ!!!」

 

そう吐き捨てるのは白いシャツに金のネックレスをつけた今風のガタイのいい兄ちゃんであった。原龍徳である。

ハロウィン相撲の横綱にして、先の乂門との対決ではデッドロスと死闘を繰り広げた男である。

 

「しかし、無事で何より」

 

そう言ったのはプロレスラーの様な逞しい体躯の持ち主藤浪ドラゴンである。

喧嘩凸最強トーナメント優勝者である剛の者である。彼はドラゴンカーセックスと言う特殊性癖を格闘術にまで昇華した男である。

 

 

「本当だぜ、お前が行方不明って聞いて心配したんだぜ」

 

 

そう言ったのは、目元が隠れるほどに前髪が長い色白の青年であった。前田修人である。

彼は喧嘩凸板と言うインターネット掲示板の住人を狩り続けていた狂気の人であったが、喧嘩凸トーナメントで山口と戦い改心。

それからは山口の友人として行動することが多い。

 

 

4人は喧嘩凸トーナメントと乂門対抗戦を通じ、友情が芽生え、いつしか定期的に飲み会を開催するほどになっていた。

 

 

この日は山口の快気祝いとしてこうして酒を酌み交わしているのであった。

 

「おっといけねえや、もうこんな時間か…俺はもうそろそろ帰るぜ。明日仕事が早えんだ」

 

 

前田が腕時計を見て呟く。

前田は喧嘩凸トーナメント後、山口の勧めで山口が懇意にしているトレーニングジムの社員として働き始めたのであった。

一生懸命に働くので職場での評判はすこぶるいい。

 

 

「おう、またな」

「仕事遅れぬよう」

「頑張って下さい!!!ファイトです!!!」

 

 

それぞれが別れを告げる。前田は手を振り席を後にした。

 

「俺たちの頑張りのおかげで日本に平和が戻って良かったな」

 

原が自慢げにそう言う。

彼が言う通り、彼ら加賀一派が乂門を打ち破ったからこそ、日本は元ある姿に戻ったのであった。

 

「して、加賀さんや矢吹は元気だろうか?スティーピーはよくCMで見かけるが…」

 

藤浪ドラゴンがそう言う。

 

「大丈夫っすよ!!!あの人たちが元気じゃない姿なんて、俺は想像できないですよ!!!」

 

山口が笑って言う。

相変わらず、見た人を笑顔にさせる太陽の様な笑顔であった。

 

その通りだな。と3人は笑った。

 

さて、宴もたけなわとなり、3人は一階にあるレジで会計をしようかと立ち上がった。

 

藤浪、原、山口の順に他の客達を避けながら階段へ向かう。

2階は満席であった。4つのテーブル席と3つの座敷テーブルは全て人で埋まっており賑やかであった。そう、そこに誰が座っているのか分からないほどに人でごった返していた。

 

藤浪が階段を降りる、続けて原が、そして山口が…山口が階段に一歩足をかけた時、ぬっと山口の後ろに黒い影が見えた。

影は腰を落とし、左腕を前に出し、右手を引いて狙いを定める。正拳突きの構えである。

 

呼吸を意識する、吸う、吐く、吸う、今、影は力を入れて山口に殴りかかろうとした。

が、右手は前に突き出される事はなかった。

 

山口は酔いも手伝い、後ろの影には気がつくこともなく、階段を下りきっていった。

 

その影が右腕を突き出す瞬間に、後ろから右手を何者かにぐいと掴まれ、引っ張られたのである。

その為、バランスを崩し、正拳突きを繰り出すに至らなかった。

 

「なんだぁあ?てめえ?さっきから俺らのことジロジロ見てやがったなぁ?」

 

影の二の腕を後ろから引っ張りながら男が言う。それは前田修人であった。

前田は飲み会中から何者かが視線をこちらに向けていることに気がついていた。

 

あからさまな視線ではないが、気をこちらに向けている。それは分かった。

 

闇の格闘家として修羅を歩んだ前田だからこそ分かった殺気である。

それに気がついた前田は席を後にした様に見せかけて、再び入店し、後ろから藤浪、原、山口をつけ狙う男に注意していたのであった。

 

そして、階段で山口を後ろから殴り飛ばそうとする男を確保したのであった。

 

「やるねぇ…ニイちゃん…」

 

男は振り向いて前田にそう言った。

その男、目は釣り上がり、口は大きかった。

嫌らしい顔をした男であった。

 

その男の名前は下衆際矢場男である。

 

「なんで、山口をぶん殴ろうとした?」

 

 

「へ、撒き餌だよ、撒き餌。とある男をおびき寄せる為に、その男のお友達を半殺しにしとこうかなって思ってな」

 

「とある男?」

 

「そう、とある男だよ」

 

言いながら、下衆際は右腕を思い切り、振り上げる。その勢いで、前田の手が剥がれた。

そして、振り下ろし、前田の鳩尾に肘鉄砲を喰らわした。

 

前田の身体がくの字に折れ曲がる。

すぐさま下衆際は前田の頭を引っ掴み、顔面に右膝をぶち当てた。

 

下衆際は膝に前田の鼻が折れる、ゴギリと言う音を感じて、勝利を確信した。

 

裏格闘家、何するものぞ…

 

思わず笑みが溢れた。が、しかし、次の瞬間、下衆際の身体が宙に浮いていた。

 

前田が、膝蹴りを食らいながらも、下衆際の両腿をひっ捕まえて、力任せにぶん投げたのである。

 

下衆際は他の超進の3人に比べて細身ではあるが、それでも80キロはゆうにある。

その下衆際を力任せにぶん投げる前田の胆力たるや凄まじかった。

 

下衆際が飲み屋のテーブルの上にどしゃりと落ち、テーブルの酒が、瓶が、皿が、料理が飛び散る。途端にそのテーブルで酒を酌み交わしていた客達が悲鳴を上げて席を離れた。

 

なんだ、喧嘩か?

早く店員呼んでこい!!!

 

2階で酒を楽しんでいた客達から怒号が飛び交う。

 

「…やるぅ」

 

下衆際が嬉しそうにテーブルの上で立ち上がった。その身体は酒と料理に塗れ、汚れていた。彼の頭から揚げ豆腐が転がり落ちる。

 

「鍛えてるからな」

 

前田が答えると同時に、下衆際は振りかぶって投げた!!!

 

何を!?それを視認する前に前田の頬に痛みが走る。

 

手で確認すると、それは串焼きの串であった。

串が頬に突き刺さっているのだ。

 

下衆際は串を前田に投げつけたのだ。

 

ただの串でも武を修めた格闘家が持てば凶器となる。

 

下衆際はニヤリと笑った。その両手にはいっぱいの串がある。

 

まずい、前田が思う間もなく、下衆際は振りかぶって投げる投げる投げる。

 

ドスドスドスドス

前田の鍛え抜かれた身体に串が突き刺さっていく。

 

前田は反射的に両腕をクロスさせ、目を覆った。それは考えての行動ではなく、反射であった。

 

しまった。そう前田は思う。

戦いの真っ只中で自分から視力を遮断させると言う愚の骨頂。

目をひとつ奪われたとしても、相手を見ておくべきであった。

そう気づくまでガードを固めてから0.5秒。

 

手を開き、視界を取り戻したその時、眼前には下衆際がいた。

 

下衆際は宙に浮かび、体を半回転させていた。

 

跳び後ろ回し蹴りである。

蹴りが前田の胴体をぶち抜いた。

 

吹っ飛ぶ前田。

 

まずい、後ろは!!!

 

前田がそう思う。

 

そう、後ろは窓ガラス。つまり、このままいけば、2階から落下。重症は免れない。

 

グッと力を両手に加える。

 

前田はガラスに後ろからぶち当たり、背後でバリンと言う音とともにガラスが割れるのを感じた。

 

が、両手を窓枠にかけてすんでのところで落ちるのを回避した。

 

両手の端から血が滴り落ちる。

 

ほっと息をついた前田であったが、前田の腹部に下衆際の前蹴りが飛ぶ。

その拍子に手が窓枠から滑り落ちる。

 

嘘だろ…

 

前田の身体は宙に投げ出され、夜の闇に消えた。

 

「矢吹晴男に伝えな!!!お前がこの街にやってこない限り、俺達はお前の仲間を1人残らずぶっ潰してやるってな!!!」

 

割れたガラスに向かって下衆際が吠えた。