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真・最強格闘家になろう 第十話「ガチのプロレスラー」

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「やめましょう、原さん」

 

山口は炎山と原の間に割って入る。

 

「やめとけ、炎山」

 

桜井も同様に割って入る。

 

「先輩、俺ら矢吹の闇討ちに来たんすよね…なら野試合に慣れておくべきかな〜って思うんすよ。ね、やっちゃいましょうよ」

 

桜井は黙した。

炎山キヨシの喧嘩が見たくないと言えば嘘になる。尊敬する先輩達が天才と言っているこの男がどんなものなのか測ってみたい。

しかし、炎山に何かあれば、警察沙汰や負傷があれば、俺は悔やんでも悔みきれない…

 

ただ、桜井もまた一匹の雄であった。

色濃い戦いの気配を嗅ぎ取った桜井の内にも欲求が渦巻いていた。

喧嘩を見てえ…なんなら俺もぶん殴りあいたい…その機会が目の前にぶら下がってやがるんだ…

日々、喧嘩の為、負けぬための練習を続ける桜井ならではの思考であった。

 

 

「…何かあれば止める」

 

桜井は一言そう言うと、スッと後ろに下がった。

 

さっすが、先輩っす。と炎山は嬉しそうに言った。

 

「相手がそう言ってんだ。お言葉に甘えさせてもらおうぜ」

 

と原は言った。もう、山口が止めても無駄であった。

 

 

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4人は路地裏に広い空き地を見つけた。

喧嘩をするにはおあつらえ向きだ。

地面は土なので投げてもコンクリートほど重傷にはなるまい。

 

炎山と桜井、原と山口は向かい合って立っていた。

 

「お前、原龍徳だろ?wHoのデドロスをぶっ飛ばした」

 

桜井が原に言う。

 

「へー、俺のこと知ってるんだ」

 

「三流レスラーをぶっ飛ばしたくらいでいい気になるなよ…」

 

桜井が原を睨みつける。

 

「そうっすよぉ〜…俺らはそんなマイナー団体じゃなくて、天下の寿のレスラーっすから」

 

炎山が腰に手を当てて言う。

 

その時、山口は2人が一体何者なのか気がついた。

 

炎山キヨシと桜井数也だ。

 

寿日本プロレスの期待の若手2人…

 

半端な相手ではない。

 

これは大変なことになったぞ…なぜ2人がここにいる。

 

「コイツと原が立ち会う。セコンドは俺とそこの眼鏡の兄ちゃん。セコンドが危険だと判断した時点で試合を止める。勝敗はどちらかのギブアップ、もしくは気絶など戦闘不能になるまで、これでいいな?」

 

桜井が言う。

 

と、炎山と原が一歩ずつ前に出た。

お互いの殺気と殺気がぶつかり合う。

ぶつかり、混ざり、膨張し、その密度が濃く大きくなっていく。殺気の円が2人を中心に大きく大きくなっていく、それが限界を超えて弾けた時、炎山が動いた。

 

姿勢を低くして、原の腰に向かいタックルをぶちかましに行った。

と同時に、原はアンダースロー気味に拳を振り下ろす。原の拳が地面をえぐり、振り上げた瞬間に宙に砂が舞い上がる。

 

砂はタックルしてきた炎山の顔面に直撃した。

炎山は目を瞑る。まずいっすね〜…と炎山が思った矢先、彼の頭部に激痛が走った。

 

原が炎山の頭を腋に抱え込み縛り上げている。

ヘッドロックである。

 

これは先の乂門との対抗戦でデドロスが原相手に使った技であった。

ハロウィン力士は仮装の天才でもある。つまり、模写の天才だ。

一度見た技なら簡単なものならすぐに真似できる。

 

「おら、もう終わりか?あんちゃん?」

 

原が腋に抱え込んだ炎山に言う。

 

「後ろからのチョークなら決まってたかもしれないっすね〜おっしーなー」

 

炎山がこともなげに言う。

すると炎山はぐるりと自らの腕を原の腹部に巻きつけて、ロックした。

 

まさか、原がそう思ったと同時に彼の身体は宙に浮いていた。

視界が目まぐるしく変わっていく、ビル、空、ビル、そして頭上に見える地面…

 

後頭部に衝撃が走る。

炎山はヘッドロックされながらも裏投げ、つまりバックドロップを放ったのであった。

 

大の字に寝っ転がる原。

早く立たねば!!!身体を起こそうとする原に炎山がのしかかる。

 

「マウントポジションゲットぉ〜、これで逆転っすね。これがガチのプロレスラーっすよ」

 

上から炎山の拳が原の顔面を捉えた。

ひたすらガードを上げる原。

マウントポジションの際はあまりに体重を乗せてパンチを打つと体勢が崩れやすくなり、マウントポジションを維持できない。

その為、手の力のみを使った打撃となる為、一撃で勝負は決しにくい。

耐えればまだ逆転のチャンスはある。

 

原は炎山の打撃を耐えた。

 

山口がその姿を見て、奥歯を噛み締める。

みるみる内に出血で顔を血で染めていく原。その顔面は腫れて膨れ上がっていく。

限界だ。

 

「原さんの負けだ。やめろ」

 

山口がそう叫ぶ。

 

「うるせえ!!!まだ勝負はついてねえ!!!」

 

原が炎山の下で叫ぶ。

 

「こう言ってますよぉ〜」

 

炎山は笑いながら尚も原を殴り続けた。

 

だめだ。これ以上は。

山口は拳を握りしめ走り出した。

 

「御免!!!」

 

そう言うと、炎山を原から引き剥がすため、炎山の肩に狙いをつけて拳を突き出した。

 

その動きを察知した桜井は、山口の前に立ちはだかり、炎山に向かって突き出された拳を手でキャッチした。

セコンドの介入があればそこで試合終了。そう言ったのは桜井だった。

 

山口の打撃は明らかにダメージを負わすための打撃ではなく、引き離すための押す打撃であった。

それを止めると言うことは自らが申し出たルールを反故にする様なものだった。

 

山口の打撃を止めたのはほとんど反射だった。

 

炎山キヨシはどんなに腹立たしい男であろうと、会社の期待のエース。つまり財産である。それを傷つけられそうになった時、自然と身体が動いたのである。

プロレスを、会社を愛する桜井らしい行動であった。

 

山口は打撃を止めた桜井の腕に飛びついた。

サンビスト山口。彼のこの技も反射から出た。

飛びつき腕ひしぎ十字固めである。

 

山口の身体が桜井の腕に絡みつく。

 

山口の誤算は…

 

山口の誤算は桜井が倒れなかったことであった。桜井は山口の体重を片手で支えている。

それどころか、桜井の腕はグググっと天に向かって伸びていく。その腕には山口。

まるで山口は木に捕まるコアラの様に桜井の腕にしがみついていた。

凄まじい怪力無双であった。

 

 

そのまま、ボディスラムの様に地面に山口を叩きつける。

尚も十字固めを狙うため腕を離さない山口。

もう一度、とばかりに桜井は腕を持ち上げた。

 

その時であった。山口を持ち上げる桜井、原を殴る炎山。2人が同時に凄まじい闘気を感じた。

刺す様な鋭いプレッシャーである。

そのプレッシャーを感じる方を見れば男が1人立っている。

 

「俺の友人達と何をしている?」

 

そう言ったのは藤浪ドラゴンであった。