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ドレスコーズ 全アルバム感想

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 ドレスコーズが大好きだ。

 というか志磨遼平が大好きだ。高校生の頃に聞いた毛皮のマリーズの大名曲「ビューティフル」にやられて、更にその後聞いたアルバム「gloomy」で完璧にノックアウトされた。

 以降、10年近くしまさんの音楽をおいかけ続けている。

 今日も一人居酒屋で飲んだ。ふらふらと家に帰るお供にapple musicを起動させてドレスコーズのアルバムをいちから聞き直していたのだが、どれも傑作すぎる。

 これは、この素晴らしさを世間様にお伝えしなければ!!!と帰ると同時にこうやって筆を取った次第であります。

余談だけど、しまさんって本当にカッコいいんだよなぁ…中年になって更に色気が増してきやがった…

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 それでは無駄話はこのぐらいにして早速紹介していきましょう。

 

 

the dresscodes(2012年)

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収録曲

1. Lolita
2. Trash
3. ベルエポックマン
4. ストレンジピクチャー
5. SUPER ENFANT TERRIBLE
6. Puritan Dub
7. Automatic Punk
8. リリー・アン
9. レモンツリー
10. 誰も知らない
11. (This Is Not A)Sad Song
12. 1954

 

 

 2011年の年末に毛皮のマリーズを終了させたかと思ったら、2012年の年始とともに産声上げたドレスコーズ。「俺止まると死ぬから」と歌っていたしまくんらしい行動力。最早焦燥感すら感じる。

 

 その年の7月にはデビューシングル「Trash」が映画「苦役列車」のタイアップに抜擢されるなどその猛プッシュぶりに俺の鼻息はとんでもなく荒くなっていたのをよく覚えている。

 

 そして満を持して2012年の12月に発売されたこのアルバム。1曲目Lolitaからやられまくりである。3曲目ベルエポックマンまでの流れが美しすぎてグッとハートを掴まれる。

 

 全曲通して、退廃的でありながらギラギラしていてファーストアルバムながら滅びを感じさせる際どさと色気がある。普通にこのころのしまさんのメンタルどんなだったんだろうか…と思いを馳せる。

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全員の立ち姿がカッコよすぎるPV

 

 

バンド・デシネ(2013年)

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収録曲

1.ゴッホ
2.どろぼう
3.Zombie (Original Ver.)
4.ハーベスト
5.トートロジー
6.シネマ・シネマ・シネマ
7.Silly song, Million lights
8.Eureka
9.(She gets) the coat.
10.Teddy Boy
11.We are
12.バンド・デシネ

 

 そして2013年に発売された「バンドデ・シネ」。これはヨーロッパの漫画ジャンルの総称であるが、もちろんこれはしまさんなりの言葉遊びであろう。が、しかし、直球すぎる曲名、アルバム名だ。「バンドで死ね」もう、この頃からバンドの破滅は始まっていたのだろうか。

 

 うろ覚えだが、トートーロジー発売くらいの頃、ドレスコーズのインタビューを読んだらば。

 しまさんが「ギターの丸山康太とラモーンズみたいな音楽したいって話したんです」とか話されていたが、しまさんは絶対ラモーンズみたいなことしたくなかったと思う。読んでてピュアで無骨な丸山さんにしまさんが話合わせたんじゃねーかな?と訝しがったのをよく覚えている。

 

 さて、肝心の内容だが、ファーストアルバムから比べてかなりとっつきやすい曲が多くなっている。本当はしまさんこう言うのやりたかったんだろうなー・・・とじんわり思う。しかし、歌詞はどの曲もまるで遺書のような、死の間際のような、焦燥感があふれんばかりであった。

 

 さあ、どう死のっか?みっつ数えろいますぐ(どろぼうより)

 いつか死ぬ時までぼくは誰かをうらやみたい(ハーベスト)

 エンドロールにはすべてのキャストの名前を刻むよ思い出せるかな(シネマ・シネマ・シネマ)

 

 

 そして、特筆すべきはドレスコーズ史上でも大名曲の「ゴッホ」である。

 

やっぱりゴッホじゃ嫌なんだ

 

と言う歌い終わりは、日の目を見ぬまま死んだ画家ゴッホでは嫌だ!!!売れたい!!けど売れるための音楽もしたくない、あー人生は悩ましい…と葛藤を抱えながらも前進しようと言う気概がヒリヒリと伝わってくる。

 

 そして、このアルバムのラストは「バンドで死ね!!!」としまさんが絶叫して幕を閉じる。焦燥感ここに極まれり。

 

 誰がなんと言おうとオリジナルメンバー期における最高のアルバムであった(まぁEP含めても3枚しかないのだが)

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しまさんが自ら監督を務めて撮ったPV。いつ何度聞いても名曲。

 

 

 

Hippies E.P.(2014年)

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収録曲

1. ヒッピーズ
2. ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ
3. Ghost
4. メロディ
5. 若者たち

 

アルバムではないのだが一応紹介。

とにかくトレイラーがカッコよくて震えたのを覚えているが、バンドサウンドから離れたラップ&EDM的なサウンドは恐らくファン達を凍らせたことだろう。

 

毛皮のマリーズ後期の名盤「ティン・パン・アレイ」も恐ろしいほどの完成度であったが、バンドサウンドからは著しく乖離しており、メンバーどう思ってんのやろ?と訝しんでいたらその年に解散である。

 

これはしまさんの音楽性がバンドメンバーを置き去りにし始めた証拠なのではなかろうか、この素晴らしいバンドは解散してしまうのではなかろうか。というかラモーンズどこ行った?なんだよキャッチコピーの『ダンスミュージックの解放』って…など様々なモヤモヤを抱えたまま聞いたのをよく覚えている。

 

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で、曲はと言うと、泣けるくらい良い。

特にPVにもなっている「GHOST」はもう、涙なしでは語れないほどの名曲である。

女の子にフラれた全男はこの曲を聴くべし!!!

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あと、ゲスト収録した□□□(クチロロ)の三浦康嗣さんはやはりと言うか、舌を巻く程にラップが上手い。昨今はやりのエモーショナル系のラップとは一線を画す、知的でクールなラップが最高にかっこいい。

 

 

・1(2014年)

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収録曲

1. 復活の日
2. スーパー、スーパーサッド
3. Lily
4. この悪魔め
5. ルソー論
6. アニメみたいな
7. みずいろ
8. 才能なんかいらない
9. もうがまんはやだ
10. 妄想でバンドをやる(Band in my own head)
11. あん・はっぴいえんど
12. Reprise
13. 愛に気をつけてね

 

2014年しまさん以外の全メンバーが脱退しました。

 

もう、一番最悪の想像が現実となった。

やはりしまさんにとってEDMは滅びのサウンドだったのか…

 

ちなみにこのアルバムは誕生日プレゼントに友達に貰いました。とてもうれしかったです。

 

特典としてついてきた制作風景を収録したドキュメンタリーが結構見ごたえあって面白かった。全13曲を短期間かつ一人で仕上げていくのは、本人の言うところの極限状態であり、飄々としていながらも、悲哀と孤独を噛みしめているしまさんの姿はファン必見である。あと、コメンタリーの元毛皮のマリーズのギターである西君のコメントが泣ける。ええ友達やん。

 

 さて内容はと言うと、すべてしまさんが演奏している訳でして、当たり前なんだけど、全作までのタイトでキリキリしたかっこいいロックサンドを期待していたら肩透かしを食らう可能性大。

 

 その代わり、短期間ですべて自分で仕上げたというだけあって、とても内省的で、「スーパー・スーパー・サッド」はバンドメンバー、そして2010年に別れた元カノ『永原真夏』ちゃんへの気持ちを全てぶち込んだ(らしい)曲となっており、これまた感涙させられる名曲である。

 

 しかし、このアルバムは決して暗いアルバムではない。むしろ、これまでと比べて明るさすら感じる。メンバー全員脱退して、焦燥感やバンドから解放され、本当に自分のやりたいことをしまさんがやり始めた記念碑的なアルバムとなっている。

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・オーディション(2015年)

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収録曲

1. 嵐の季節(はじめに)
2. jiji
3. スローガン
4. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5. メロウゴールド
6. We Hate The Sun
7. もあ
8. しんせい
9. オーディション
10. みなさん、さようなら
11. 贅沢とユーモア
12. おわりに

 

前作と打って変わって、さまざまなサポートメンバーを迎えて収録した賑やかなアルバムである。

 本人曰く、2015年と言う年を記録したもの、らしく。当時加熱していた安保条約のデモなどの影響下で作られただけあって、珍しく政治色や現代的なニュアンスがほんのりする歌詞が印象的だった。(特に、スローガンやjijiなどはそれが顕著だ)

 

 前作が自分を歌ったアルバムならば、今作は時代を歌ったアルバムであった。

 正直、あんまり聞かないアルバム。と言うのも、このアルバムよく言えばまとまっている…(この表現が正しいのか、甚だ疑問だが)のだが、悪く言えばフックがあんまりない、作品のように感じる。

 

 もちろん完成度は高いのだが、やはり、さまざまなアーティストを使っただけに、しまさんがセーブしたのかなぁ、なんて勘ぐる。

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よっしゃ Let's スーサイド! でも 今日はやめ(贅沢とユーモアより)

 

と歌っているしまさん。バンドで死ね!!!と言っていたのに…よかったね(泣

あと、謎にダンス上手い。

 

平凡(2017年)

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収録曲

1. common式
2. 平凡アンチ
3. マイノリティーの神様
4. 人民ダンス
5. towaie
6. ストレンジャー
7. エゴサーチ・アンド・デストロイ
8. 規律/訓練
9. 静物
10. 20世紀(さよならフリーダム)
11. アートvsデザイン
12. 人間ビデオ

 

1とオーディションが2部作の様な、兄弟的作品というならば、平凡から始まる、平凡、三文オペラ、ジャズはコンセプトアルバム3部作と言えると俺は思っている。

さて、この平凡だが、ドレスコーズソロ体制となって以降、一番カッコよいアルバムに仕上がっているのではなかろうか?と睨んでいる。

前作までの、時代や自分やバンドに対する思いの吐露ではなく、純粋な音楽の演奏に注力したと語っていただけあって、どの曲も最高にタイトでかっこいい。日本でも1,2を争うくらい非凡な男のアルバム名が平凡だなんて、なんて素敵な皮肉なのだろうか…

 

あえて、このアルバムにテーマをつけるなら『客観』であると思う。

正直、このアルバムは歌詞をしっかり聞く、歌唱として捉えるのではなく、曲として捉えるべきである。

 それだけに、ドライブのお供には一番しっくりくる。真夜中の高速とかで聞きたい。

 タイトでおしゃれで美しい。新生ドレスコーズの旗印のような作品である。

 あと、最後に収録されている『人間ビデオ』は死ぬほどカッコよい。

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ドレスコーズの《三文オペラ》(2018年)

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収録曲

1. 三文オペラのテーマ
2. もりたあと(殺人物語)
3. ピーチャム商会社歌
4. 性愛行進曲
5. 結婚の歌
6. 海賊ジェニー(あるいは女給が見る夢)
7. カノン(大砲の歌)
8. 恋の歌
9. バルバラ・ソング
10. この世は最低(第一幕のフィナーレ)
11. メロドラマ(離別の歌)
12. 娼婦たちのララバイ
13. ヒモと娼婦のタンゴ
14. 資本主義の歌
15. 女はおそろしい
16. あなたには(第二幕のフィナーレ)
17. ちょっと足りない歌
18. ソロモン・ソング
19. 運命の罠
20. 殺すな(死刑台のバラード)
21. 終曲(第三幕のフィナーレ)
22. りぷらいず(殺人物語)

 

はっきり言おう。問題作であると。

最早、バンドで死ね!!!と歌っていた男の影すら残っていない。

だってオペラだぜ!?

本作は劇伴を務めた『三文オペラ』の劇中曲を全てしまさんボーカルで収録したと言うロックバンドのアルバムとは一線をまた画した作品である。この男はどれだけ一線を画し続ければ気が済むのか。

 

本人はクルト・ヴァイルによって90年前に書かれたスコアのカヴァーと言っているが、このアルバムはれっきとしたドレスコーズのオリジナリティあふれる作品であるし、平凡から続く、コンセプト&客観的と言うテーマが脈々と最後の一曲まで貫かれている。

 

この辺りから、曲の聞き方に関して考えさせられ始めた。

つまり、普段歩きながらやドライブしながら聞くというのが俺の音楽を聴くスタイルなのだが(恐らくかなりの人がそうであろう)、このアルバムは完璧にこれを聞く時間を用意しなさい。つまり、ながら聞きは許さぬ、と語りかけてくる。

本を読むように、1曲目からゆっくりと、じっくりと聞くべきアルバムである。

それ故に、ラスト前の『終曲』でこのアルバムはクライマックスを迎え、ラスト『りぷらいず(殺人物語)』でカーテンコールを迎えるのである。

 

ちなみに、ドレスコーズで唯一LP盤が発売されているので、お買い求めの際はそちらを買うのもいいかもしれない。

 

 

 

・ジャズ(2019年)

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収録曲

1. でっどえんど
2. ニューエラ
3. エリ・エリ・レマ・サバクタニ
4. チルってる
5. カーゴカルト
6. 銃・病原菌・鉄
7. もろびとほろびて
8. わらの犬
9. プロメテウスのばか
10. Bon Voyage(ドラマ「やじ×きた」主題歌)
11. クレイドル・ソング
12. 人間とジャズ

 

コンセプト3部作の終作(となるかどうかはわからない)ジャズ…テーマは『人類最後の音楽』いくところまでいっちゃった感満載である。

もう、これまでの、ソロ活動の集大成の様な作品である。

ファーストアルバムで感じていた個人の退廃ではなく、しまさんを含む全人類に向けての退廃とでも言おうか、緩やかな絶滅…なんて大上段で構えたコンセプトが音楽として成立するのは、ひとえに東京スカパラダイスオーケストラ等超一流のアーティスト達がレコーディングに参加し、その腕前を遺憾なく発揮したからであろう。

 音楽性は異国情緒あふれていてかっこいいし、それでいて聞きやすい。それは平凡以降続く、客観を意識してきたしまさんだからこそ出来る芸当であろう。

 こちらも「三文オペラ」同様、軽い気持ちで手を出すとやけどするようなアルバムとなっている。

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

私も力が入りすぎて、一気に6000字あまり書いてしまいました。

長々と書いてきましたが、言いたいことはただ一つ。

 

ドレスコーズという最高の音楽にぜひ触れてほしい。

 

これだけである。