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最強格闘家になろう 第十七話「決戦開始」

12月31日、武道館は異様な熱気に包まれていた。

全国からイキリオタク達が集まり、中には風呂に入らないヒキニートもいるのだろうか、会場には汗臭さが漂う。会場は満員であった。

武道館の中央には巨大なマットが用意されている。今夜死闘の舞台となる、死のマットだ。

 

ひしめき合う会場の裏、控室で、真島浩高はあたりを見回していた。控室は選手とそのセコンドや関係者で喧騒に包まれていた。

いない、晴男さんがいない。真島は辺りを見回しても晴男がいないことに気がついた。

一体どこにいるのだろう?真島は気が落ち着かなかった。

真島にとって晴男はいじめられっ子だった自分を変えてくれた恩人であり、そして唯一無二の師匠であった。後味の悪い別れ方をしたものの、晴男に対する尊敬の念は変わっていない。その想いがあったからここまでやってこれた。

晴男と別れてから始めたボクシング。真島はプロボクサーになっていた。数ヶ月前に圧倒的な力で新人王戦で優勝し、新進気鋭のボクサーとして業界から注目されていた。

「どこにいるんですか…晴男さん…」

思わず声が口から漏れた。

「おい、ヒロ、今は試合に集中しろ」

今回、セコンドをかって出てくれた山下地蔵が真島のテーピングを巻きながら呟く。

元々、真島は学生時代山下にいじめられて不登校になった。しかし、通い始めたボクシングジムが偶然同じで、そのことがきっかけで仲良くなり、今では無二の親友である。

山下は泣きながら当時のことを謝ってくれた。それを真島は受け入れた。晴男に出会わなければ、きっと今でも暗い部屋の中、一人でいたことだろうと真島は思う。

しかし、晴男と出会い、変わり、親友が出来、生きる目標が出来た。

だからこそ晴男に恩返しがしたい、そして自分なりの恩返しの仕方は晴男を超えることだと決意した。だからこの大会にも出場を決めたのであった。

 

その頃、マットの上に一人の男が現れた。壮年の紳士である。彼はタキシードに身を包み、マイクを握った。今大会の首謀者、楊楊氏である。

「地上最強の男が見たいかー!!」

楊が叫ぶ。その声に呼応するように皆叫んだ。それは叫びと言うよりも地響きに近かった。

男達の雄叫びが武道館を揺らしたのであった。

「御宅を並べるのはよそう、お前らは俺を見にきたんじゃないだろ!?戦士の血を皆きたんだろ?ならはじめよう!!!第一試合!!!矢吹晴男対牛丼田中丸!!!」

 

うぉおおおおお!!!!

またもや男たちの叫びが武道館を揺らす。

会場の東出入口より、一人の男がマットの上に歩み寄る。

その男は温和そうな顔とは裏腹、剥き出しになった上半身の筋肉は鋼鉄を想起させるほどの膨らみと鋭さを持っている。

迷彩柄のパンツも生地の上からわかるほど太くてデカい。

「東!!!183センチ、103キロ!!!牛丼田中丸!!!」

実況が館内に轟く。

その声と同時に田中丸は右腕を高々と挙げた。

また歓声が館内に響く。

「西!!!177センチ、96キロ!!!矢吹晴男!!!」

わぁああ!!!と歓声が上がり、晴男が出入り口より現れるのを皆が待ち構える。

しかし、晴男は出てこない。マットの近くでスタッフ達が慌てているのが分かる。

 

「晴男さん…一体どこに行ってしまったんだ…」控室のモニターから真島が心配そうに眺めている。

 

「こなければ、私の不戦勝ということでいいかな?」

牛丼田中丸が近くのスタッフに声をかける。その声は落ち着き払っていて、今から死闘を演じる男の声ではなかった。

会場がにわかにざわめき始める。

「おいおい、こんなことあるのかよ」

「晴男を出せ!!!晴男はどこだ!!!」

男たちの怒号が飛ぶ。

 

「ショウブハマダツイチャイナイヨー!!」

その時、力強いカタコトの日本語が館内に轟いた。皆が静まり返り、声の主を探る。

彼女は観客席の1番後方にいた。

「おい!!!あれ、ハリウッド女優のユユサーマンじゃねえか!!!」

誰かがそう叫ぶ。確かに、その声の主はブルースリースーツに身を包んだ、ハリウッド女優のユユサーマンであった。

そして、その隣にはフォークギターを持った青年の姿があった。

その青年が歌ったのは、数々の大音楽家達がカバーしてきた珠玉の名曲、朝鮮半島の悲劇の歴史を歌った「テムジン河」であった!!!!

 

青年は歌いながら会場の階段を降り、試合会場のマットの上まで歩を進めていく。

そして、彼は見事にテムジン河を歌い切った。

彼の歌声に会場の人々は涙を流した。

一体、なぜ兄弟達は一つになれないのか?

一体僕らを隔ているものってなんだろう?

「パッティギ!!ラブアンドピース!!!」

青年はそう叫ぶとギターを床に叩きつけた。

その様はまるで、ギターを国境に見立て、僕たちの心を一つにしてくれている様だった。

 

「いやぁ、すいません、コカイン流パリピ道家達を倒すのに時間がかかって遅れてしまいましたよ…」

 

この青年こそ、我らが矢吹晴男、その人であった!!!

 

「矢吹…」田中丸の顔が一瞬歪む、それは闘志からかそれとも憎しみからか…

「待たせたな牛丼田中丸…そんな涼しげな目もと流し目しても

めっ!!だぞ…」

 

死闘がついに始まる。

 

 

なんとなく幸せを…

今日、体調不良で会社を休みました。

もうこりゃダメですな。

毎日毎日働いて疲労が溜まっておりましたな。

久々にゆっくり休もうと小説や漫画や映画を寝ながら見まくろうと思っていましたが、結局一日中寝てました。

俺は完璧な社会不適合者ですが、なんとか自分を偽ることで社会人として生きています。が、たまに思春期の時のように全てを破壊し尽くし、陵辱の限りを尽くしたくなる時があります。

そして、社会人になり3年、その思いは日増しに強くなっています。

貯金も貯まったし、もうそろそろ辞めてもいいかなと思う今日この頃。

しかして、生きるだけならなら大した金はいらないけれど、幸せになるにはそこそこ金がいるこのご時世。

仕事は死ぬほど嫌いだけど、金は面白いほど貰えるんだよなぁ…

昔、幼馴染みが「これから先の世の中、当たり前が当たり前じゃなくなる」と言っていた。

つまり、貧困が当たり前になる世の中がそろそやってくると彼は言いましたが、俺も全くその通りだと思います。

 

THE END IS NIGHと昔の人風に言いましょうか

 

そろそろバンドの曲を作らねえと

 

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最強格闘家になろう 第十六話「喧嘩凸板最大最強トーナメント」

 

街の喧嘩自慢達が格闘技及び、強い男について語るスレッド、「喧嘩凸板」

その喧嘩凸板に衝撃走る。

 

きっかけはひとつの書き込みであった。

「で、喧嘩凸板的には最強って誰なのよ?」

 

少し前ならば皆、口を揃えて「ハッちゃん」と答えたであろう。しかし、ハッちゃんは詐欺と傷害で豚箱に打ち込まれてしまった。

その為、議論は割れた。

 

「そりゃあ、ハッちゃんの弟子の矢吹晴男じゃねえの?」

「いや、晴男はハロウィンで黒人歌手にボコボコにされたって話だぞ」

「なら、著名黒人歌手が1番か?」

「でも、黒人歌手よりもフォークソングの伝道師のが強いって噂だぞ」

「誰だよそれ」

「やっぱり1番は吉岡清一郎だろ。非情さが他とは違う」

 

数々の意見が出る中、1人の男の書き込みが喧嘩凸板史上最大の事件を巻き起こす。

 

「俺が金全部出資してやるからトーナメント大会開くぞ」

そう書き込みしたのは無類の格闘技好きめ知られる中国系実業家「楊 梁(やん やん)」であった。

楊本人の名をつけたお菓子、「楊楊つけぼー」が大ベストセラーとなっており、彼が巨万の富を得ていることは周知の事実であった。

 

この書き込みにより、喧嘩凸板は祭り状態になり、スレッドが瞬く間に消費されていった。

楊の書き込みは所謂釣りで、嘘なのではないか?との見方もあったが、楊の書き込みから2ヶ月後、事態は急展開を見せる。

 

「12/31の武道館押さえたったわ。大晦日にトーナメントするぞ」

楊がTwitterでそう呟いたのだった。

こうなってくると現実味が湧いてくる。

皆、トーナメントのルールは?出場選手は?と語り合い、スレッドの消費スピードは更にましたのであった。

 

そして、Tweetから数日後、このトーナメントについて公式サイトがオープンされる。

 

そのトーナメントの正式名は…

「喧嘩凸板最大最強楊楊トーナメント」

 

ルールはなんでもありのパーリトゥード方式を採用。どちらかが負けを認めるまで、もしくは失神等戦闘不能になるまで試合を続ける。

 

続いてトーナメント出場者であるが、出資者にして責任者の楊自らがスカウトした、表格闘技、裏格闘技の雄達、最強戦士16人。

その16人によるワンデートーナメント。

それが喧嘩凸板最大最強楊楊トーナメントである。

 

16人の顔ぶれはこうだ。

ルーザーは最強のリベンジャーに生まれ変わった!!!牛丼一筋300年。孤高の軍隊オタク…牛丼田中丸!!

 

好きな教科は帝王学体罰上等、お前らがかわいいけんなぐるんや!!!無敗の教鞭流皇帝拳法の使い手…

吉岡 清一郎!!!

 

ボクシング界の若きホープ。元いじめられっ子のリアル一歩くん!!!

真島 浩高!!!

 

あの日、もう2度と負けるかと誓った…悲劇の天才格闘家…元力士、元総合格闘家、そして今はアブラゼミ科ブラジャー属…

琴春菊!!!

 

日本の恥、相撲と人に迷惑をかけることなら任せてくれ!!!ハロウィン力士横綱

原 龍徳!!!

 

誰がキャットファイトは女のものって決めつけた!?キャットファイト歴30年の大ベテラン!!!リビングレジェンド

猫田 戦!!!

 

ドラゴンを愛し、ドラゴンに愛された男…最愛こそ最強!!!ドラゴン一族の族長…

藤浪ドラゴン!!!

 

ホコリ、えんぴつ、果てはウンコも食わされた!!!大物食いを見せてくれ!!!

デスイーター本郷!!

 

ラーメンの鬼は生きていた。救った貧乏は数知れず、スープと麺へのこだわりは他の追随を許さない!!!

佐野 実鬼!!!

 

裏社会の殺し屋は実在した!!!快楽を追い求める伝説のアサシン!!!猛毒(屁)の使い手!!!

柳田 國房!!!

 

戦いたいからここまできたッ!!!キャリア一切不明!!!ブリットファイター!

ジャック・マンマー!

 

情熱のサンボ⭐️マスター!!!MCと関節技は日本一!!!できっこないをやらなくちゃ!!!

山口・ヴィクトロヴィッチ・タッカーシー!

 

失うものは何もない!!!故に最強!!!引きこもり歴20年…虚無僧こと…

前田 修人!!!

 

星空の下のディスタンス!!!人は彼をフォークの生き字引と言う。燃え上がれ、愛のレジスタンス…

坂崎 慎之介!!!

 

盲目のピアニストは世界に感動を与えた!!!次は殺戮をプレゼントしてやる!!

ティーピー・

       ワンダー!!!

 

最強のDNAは生きていた!!!喧嘩凸板、いや、日本最強との噂もあるハッチャン最後の弟子…狂戦士

矢吹 晴男!!!

 

以上、16人によるトーナメント。

決戦は12/31の大晦日

 

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遂に第二部開始です。

最近、体調不良が続き死にそうです。

しかし、そもそも人はショーペンハウアーが言ったように生きてくるべきではないので、死ねば全ての苦しみから解放されるのです…

 

季節は挨拶もなく過ぎていく

日々、ひび割れ、今年もあと少しで終わりですな。

皆さま、いかがお探しですか?私は死にかけております。

溜まりに溜まった仕事と、サービス残業、おまけに体調も崩しがち…こりゃこりゃどうしたもんかと思う毎日です。

そんな日々の中、愚痴をこぼそうものなら、やれ、もっと頑張っている人がいる、やれ、お前は恵まれていると言われ、愚痴すらも許されない現状です。

私、たまにはリフレッシュせんとな、と、今日は定時に上がりました。

ご飯食べて、映画見て本を読んでとして、いざ眠ろうというと、これが全然眠れません。

何故か枕が固くて、頭の位置を何度も直すのですが肩が凝るばかり。

そこでこうしてブログを書いているわけでごぜえやす。

 

やはり、最近は小説を書くのにハマっておりましたが、これが難しいですな。面白いものを書くのは難しい。

村上龍限りなく透明に近いブルーを読みましたが、ありゃ天才ですよ。

24歳であれが書けるなんて凄いよねぇ…

逆立ちしても敵いません。

あとは、最近ね、10年ぶりにUSJ に行ってまいりました。

ビッポグリフに並んでたら頭の上に鳥のフンが落ちてきましたよ。

 

なんかUSJ って大雑把だよな。ホグワーツ城の隣はバリバリ工事中だし、なんか世界観に統一感がないのは分かるけど、せめて道路が中からは見えないようにしてもらいたいもんだね。

夜景はとても綺麗でしたよ。

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あとね、夏から絵画に目覚めたよ。

クリムト展でベートベンフリーズのレプリカ見て感動してね。

そこから印象派の展覧会に行ったり、前はカラヴァッジョ展見に行きました。

エコール・ド・パリの作家達の作品も飾られてて素敵でしたね。

どんどんスノッブになっていく今日この頃。

なんだか心臓が痛い。昔から不整脈だからね。

カラヴァッジョを見に行った時に展示されてたアート。なんだかよく分からんが気に入ったのでめちゃくちゃ写真撮りました。

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それと、ツインピークス全話見ました。

結局、あれは家庭と言う戦場で死んでしまった女の子のお話だと思いました。

ヤバイね、あれね、特にリターンズの8話は前衛芸術でしたよ。

 

 

小説書いてるからよかったら読んでね

今、ここで書いてるのはギャグ小説で、矢吹晴男と言う弱々しいサラリーマンがとち狂って犬になったり、スティービーワンダーと戦ったりとかなり滅茶苦茶な話です。そろそろ第二章描かないとなぁ。

 

こうして書くと毎日楽しいかもしれんと言う気になってくる。明日も朝から打ち合わせだしそろそろ寝るかぁ…寝れるかなぁ?

最強格闘家になろう 第十五話「悪食(デスイーター)」

ファミリーレストラン

その名の通り、家族連れからカップル、お一人様、幅広い客層に支持されている、まさにキングオブ外食。

とある日の夕方、⚪︎×町のファミレス「罪ゼリア」も多くの人で賑わっていた。

 

「ゴラァ!!!」

 

その怒号によって人々の談笑する声、料理を口に運ぶ手、全てが止まり、その怒号の主を皆見つめた。

恰幅の良い50代くらいの男性であった。

口髭を蓄え、でっぷりとした腹は作業着に包まれ、顔は浅黒い。おそらく土建屋の現場監督であろう。

その男が、店員を怒鳴りつけている。

 

「なんで、ワシの料理にゴキブリが入っとんねん!!!」

 

そう言いながら、立っている店員に料理を見せつける。

男が持つ皿の中には、白い色のスープが入っており、その中に黒い物体が浮いている。

死んだゴキブリだ。ゴキブリが入っているのだ。しかし、何故ゴキブリが入っていることに気がつかなかったのであろう。

白いスープに黒いゴキブリが浮いていれば気付くものである。

店員はオロオロとして、ただ、すいませんと繰り返している。

「すまんじゃすまされんやろボケ、店長呼んだこいや!!!」と尚も男は怒鳴りつける。

「…店長は勘弁してくれませんか?」

店員はオロオロと男の顔を見ながら薄ら笑いを浮かべている。

決して何か楽しいわけではない。こういう時、気の弱い人間はなんとか気を落ち着いてもらおうと笑うのである。また、笑うとは歯を剥き出すと言うことである。野生動物が歯を剥き出しにするのは威嚇する時だ。自衛の姿勢なのである。

つまり、こう言う時、気の弱い人間は相手を落ち着かせようとすると共に威嚇も同時に行なっているのである。

こう言った態度は逆効果である。気持ちを逆撫して言動や行動をイタズラに増長させるだけなのである。

 

「なんや、お前、自分のケツもふけんヤツとはなっさけないわぁ…呆れたわ…」

男が更に店員に詰め寄る。

この店員尚も薄ら笑いが顔にへばりついている。坊主頭で体の線は細い。いかにも気の弱そうな男である。

男はあからさまにため息をついてみせる。

その男に向かって恐る恐ると言った感じで、店員は声をかけた。

「なら私が食べましょうか?」

男は、え、と問う暇もなかった。

店員はスープの中からゴキブリをヒョイと持ち上げるとパクリと食べてしまった。

ムシャムシャと音をたてて食べる。口の端からゴキブリの黄色い体液が溢れ出し、顎までダラリと液が垂れ下がった。

誰もがその光景に釘付けになった。

「満足いただけだでしょうか???」

店員は満面の笑みで男に話しかける。

その口の端がテラリと光っている。

絶句である。男は何もいえなかった。言い返す言葉が見つからなかった。

「も…もうええわ、ちょっと、トイレ行ってくる」

男はやっと、そう一言絞り出した。

ショッキングな光景を目にしたからか、強い便意を急に催したのである。

男は立ち上がり、店員の横を通り抜けようとした。

しかし、通り抜けることができなかった。店員が男のベルトを掴んでいたからである。

 

「なんや!?お前!?」

男が絶叫する。

「私、自分のケツは拭けませんが、お客様のケツなら拭いて差し上げます。さぁ、私のことを便器と思ってください」

 

「な…なんや!!!お前!!!」

 

男がそう言うのを無視して、店員は男のベルトを外し、ズボンを脱がせ、パンツを引き裂いた。この間僅か2秒。

下半身だけ生まれたばかりの姿になった男はもう訳もわからず泣きかけていた。

俺はファミレスに来て一体どうしてこうなってしもうたんや!?

逃げ出したいが、足元までずり下ろされたズボンのせいで歩くどころかうまくバランスも取れない。

倒れかけたところを後ろからがっしりと店員に左右の腰を押さえつけられ、そのおかげで、なんとか立っていられた。

安心したのも束の間、男の肛門に違和感が走る。

店員が大きく開けた口を男の肛門にぴったりと押しつけたのであった。

 

「さぁ!!!お客様!!!いつでも準備万端ですよ!!!」

 

店員は尚も薄ら笑いを顔に浮かべていた。

その顔に狂気が宿っている。

男は泣いていた。

 

「勘弁してくれ!!!やめてくれ!!!頼む!!!うんこ出そうなんや!!!」

 

男は叫ぶも、店員は離さない。

 

「なぜ悲鳴をあげるんです。『お前より強い者がお前をしっかり掴んでいるのだ』泣こうが喚こうが小鳥のお客様は鷹の俺の行く所にしか行く事ができませんよ?」

 

いやぁあ!!!男が悲鳴を上げる。と同時に、ブリブリブリブリと排便音が店内に響き渡る。

 

飲食店である。夕飯時である。店内にいたお客は皆ここから逃げ出す為にレジへと急ぎ、ある者は嘔吐に耐えきれず、トイレへと駆け込んでいた。

まさに地獄である。そして、この夕飯時のファミリーレストランと言う幸せな空間を地獄に変えたメフィストファレスはゴクリゴクリと喉を鳴らして排泄物を腹へと押し込んだ。

 

全てが終わったあと、店員はやっと男の腰から両手を離す。その瞬間は男は恥辱、屈辱の為に疲弊しきった身体を二つに折り曲げ、ばたりと倒れ込んだ。

「すいません…本来なら提供する側の私がお客様からこんなにいただいてしまって…」

店員は申し訳なさそうにそう呟いた。

 

この店員、名前を本郷太郎と言う。

彼は狂っていた。

彼が異常性を発揮したのは中学生の頃である。

彼は世に言ういじめられっ子だった。何をされても困ったように笑うだけの彼をクラスのヤンチャ小僧たちは見逃さなかった。

彼らのいじめは次第にエスカレートしていった。暴力なんて当たり前であった。

しかし、中でも苛烈だったのは、本郷チャレンジと言ういじめであった。

本郷の実家は貧乏であった為に、本郷はいっつも腹が減ってるからなんでも食べると言う噂が出回った。

噂を聞きつけたいじめっ子達は本当になんでも食べれるのかを試し始めたのであった。

それが本郷チャレンジである。

本郷の体を押さえつけ、無理やり口をこじ開ける。まずはホコリ、次は鉛筆、と口に放り込んでいく。本郷はバリバリとそれを咀嚼し、困ったように笑うのであった。

そして、チャレンジはエスカレートしていき、事件が起こった。

ある日、いじめっ子達は排泄物が浮かんだ洋式便器の中に本郷の頭を押し込んでいた。

 

「おら、食えよ!!!貧乏人!!!」

そう言って彼らは笑った。最早いじめの範疇を超えている。しかし、彼らは自らの異常性に気がついていない。暴力とは甘美な酒なのである。その酒に酔うと自分が、そして周りが見えなくなってしまう。

彼らは誰かを虐げることで自らの万能感に酔っていたのである。

 

ゴギュゴギュゴギュゴギュ

 

排水管に水が流れるような汚い音がトイレに響いた。

いじめっ子達はその音が本郷から出ていることに気がついた。

本郷はうんこどころか便器の水まで全て飲み干したのである。

いじめっ子達はあまりのことに絶句した。

万能感の酔いは覚めていき、かわりに恐怖が背筋を走り抜けた。

何故恐怖が背筋を走り抜けたか?

本郷が笑っていたからである。いつものように困ったような薄ら笑いを顔に張り付けていた。

 

「楽しかったね、次は何して遊ぼうか?」

そう本郷は言ったのである。

その時、初めていじめっ子達は気がついたのである。

本郷がいつも笑っているのは困っているからではない。狂っているからなのだ。

その後、本郷は『最大いじめられっ子トーナメント』にて優勝を掻っ攫い、日本最強のいじめられっ子として名を全国に轟かせた。

 

彼のことを人はこう呼ぶ、「悪食(デスイーター)本郷」

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(あとがき)

遂に15話まで来ましたね。

飽きやすい性格なのでどこまで続くか不安でしたが、意外と長続きしてます。

次回からは遂にトーナメント編です。トーナメント編とか言ってるけど、一切ノープランです。

ちなみに、この本郷太郎は昔僕が書いた漫画に出てくるキャラクターなんです。

スターシステム導入です。

よかったらこっちも読んでみてください。

 

最強格闘家になろう 第十四話「猛毒の男」

満員電車、人と人が密集して動く隙間さえない。

そんな状況で、1人の女子高生が俯きがちに、身体を左右にくねらせていた。

苦悶の表情を浮かべている。

彼女は今まさに後ろの男に尻を触られているのである。

痴漢である。後ろの男は脂の乗った40男と言ったところであろうか。

舌舐めずりしながら少女の身体を弄っている。

少女は屈辱と悔しさに顔をしかめている。

そんな表情を知ってか知らずか、男はニヤリと笑う。

こう言った男は何故、風俗などに行って性欲を満たさず、わざわざ犯罪を犯すのだろうか?

それは、この痴漢と言う行為が性的な欲求意外の欲望を満たしてくれるからである。

嗜虐、支配欲と言った黒い欲望をそう言った性風俗で満たすのはなかなか難しい。

何故ならば、風俗嬢などは仕事として割り切ってサービスをしているわけで、どこまで責めても何処か冷めた気分になるのだ。

しかし、痴漢となると違う。本物の女の、本物の肉体を触る。しかも、この女は明らかに嫌悪感を抱いているのに、何も言ってこない、それは自分のことを恐れているからだ。

そう思うと、男は堪らなく興奮し、女子高生の尻を握る手の力を強くした。

 

と、その時、男の下半身に違和感が走る。

力強く握られているのである。

「お楽しみのところ、悪いね」

後ろから男にしか聞こえないほどの声量で声がした。見ると、黒髪をオールバックでなでつけたの中年の男性が立っている。小柄だが、手は太く、その顔つきは猛禽類を思い出させる鋭さがあった。

「な」

なんだお前は、そう言おうと思ったが、声が出なかった。何故ならば、その瞬間、後ろに立った男が痴漢をしていた男の尻の肉を引きちぎったからである。

あまりの痛みに声が出ない。今度は男の手が痴漢の腰に当てられた。ふん、と男が力を入れると、痴漢男は全身の筋肉が硬直し、きおつけの大勢から動けなくなってしまった。

「頸椎をいじった…しばらくは声も出せねえぜ…あんた、この地球上で最も有毒な気体…死に至る気体…知ってるか…」

無論、答えられるはずもない痴漢男はただ、震えることしかできなかった。

震える男の目の前に後ろから男の手がぬっと伸びる。その手は痴漢の目の前でパッと開かれた。

その瞬間、異臭が鼻腔を貫いた。それは腐ったチーズのような、嫌、もっとおぞましい臭い…

「答えは屁。わかった時にはもう遅い…」

一言で言うと握りっぺである。痴漢男はその瞬間、完璧に意識を失った。しかし、この痴漢は意識を失ってなお、その体は倒れることを許されず、立ったまま気を失っていたのであった。

「お嬢ちゃん…大丈夫かい?」

男が女子高生に声をかける。

「あ…ありがとうございます…」

女子高生は振り向きながら男の方を見る。その目には涙が溜まっていた。

「礼なんていらないよ…しかし、そうだな、もしよろしければ、そのイヤホンをくれないかね?」

「え?こんなもので良いんですか?」

女子高生は訝しげに男に尋ねるも、男はただ笑っているだけであった。

 

 

駅のホームから異様な男が出てきた。

その男が歩くたびに周囲には風が走る。ヒュンヒュンと音をたてているが、果たしてそれがなんなのかまでは分からない。

男がピタリと身体を止めたと同時に風も止んだ。男の手から細い糸が垂れていて、その先には黒い豆の様な小さな粒があることが分かる。風の正体がイヤホンが振り回される音であることがその時わかった。

次の瞬間、もう、イヤホンは男の手からなくなっていた。

どこに行ったのか、正解は口の中である。

ぐちゃぐちゃと咀嚼音を立てながら男はその味を堪能していた。

裏若き少女がこのイヤホンを買った日、きっと彼女は胸を躍らせただろう、そして、恋をした日は流行りのラブソングをこのイヤホンで聞いただろう。そして、失恋した日には失恋ソングをこのイヤホンで聞いただろう。

そんなことを思いながら咀嚼していると、この男の背骨に甘い快感が走った。

所詮、自分もさっきの男と同じ穴のむじなよ…

そう思うこの男、快楽流空道の免許皆伝を持ちながら、裏社会にその身を落とした伝説の暗殺者、柳田國房、人呼んで「猛毒 柳田」その人である。

 

最強格闘家になろう 第十三話「サンボ⭐︎マスター」

大衆居酒屋であった。

とにかく安い早いがモットーのこの店は大学生でごった返してた。

1人の男がカウンターで1人酒を飲んでいた。

小柄で少し肥満体の男であった。

短髪で眼鏡をかけている。

おおよそ女にモテると言った風体ではない。

しかし、その男の周囲だけ温度が1.2度熱くなっている。それはこの男の秘めたる熱量が原因である。

 

「なんだとオラァ」

男の声が居酒屋に響く。

見ると、座敷席で飲んでいた男が隣の席の女達を怒鳴っている。プロレスラーの様な恰幅のいい男であった。

男の怒鳴り声が尚も響く。内容から察するに、女をナンパしたはいいものの、相手にされなかった男が逆上して暴れている。そう言ったものであった。

 

この男、酒に酔いすぎているように見える。

呂律が回らず、あたりのモノを蹴り飛ばしながら女達に詰め寄っている。

女達は涙を流し、うずくまることしかできない。

「お客さん困りま」

店員が止めに入ったが、最後まで言い切る前に男に殴り飛ばされてしまった。

こうなるとタチが悪い。

その場にいる人間は見て見ぬフリを決め込んでしまった。

騒ぎに巻き込まれて怪我でもしたらたまったもんじゃない。店員の誰かが止めるだろう、止めなくとも誰かが警察を呼ぶだろう。

そんなことを考えているのである。

しかし、誰かが止めに入るまでの間に女達が危害を加えられたら一体どうするのだ。

どうもしない、傷つきもしない。本人達は気がつかないが、傍観者であると決めた人間の冷酷さたるや異常である。

 

「ちょっと、あの、そこの、いいですか??」

先ほどまで1人で飲んでいた小太りの男がいつのまにか座敷に上がり、男と女達の間に立っていた。

「あのね、俺はね、これどうなんのかな?って思いながら見てたのよ、でね、誰もね、立ち上がらないわけよ、信じらんないの俺は、こんなね、世の中でね、愛と平和とか言えねえわけ、俺は」

穏やかだが、熱っぽい、しかし、心の奥底に響く。そんな声だった。

 

「何言ってるかわかんねえぞ!!!」

男が小太りの男の顔に拳を入れる。

しかし、小太りの男は倒れない。それどころか、身動き一つすらしなかった。

「あのね、あんたがね、どう言う人生をね、歩んできたかとかね、俺は知らねえわけ、でもね、俺はね、許せねえわけ、でも、もっと許せねえのはね、後ろで知らん顔してる奴らなわけ、後ろまで俺の声聞こえてるかー!!!」

小太りの男が叫ぶ。

熱い、魂を直にぶつけられた、生身の心臓の熱を全身にぶっかけられた、そんな声だった。

「いい加減にしろよ馬鹿野郎」

「女の子虐めてんじゃねえぞ」

「金払って帰れクソやろう、俺も戦うぞ」

小太りの男の異様な熱量とカリスマ性に当てられた客達から声が上がる。

彼らは傍観者でいることを今やめたのである。

 

「今からね、俺はね、こいつと戦うけど、それはね、それはどこかの誰かの為に戦うわけじゃないんですよ、今日、ここに来てる人たちの為に俺は戦うわけですよ!!!できっこないをやらなくちゃダメなんですよ!!!あんたらいけますかー!!!」

 

おおおおおお!!!地響きの様な歓声が店に響く。

 

小太りの男の声に客全員が答えたのである。

 

「俺がね、俺がなんでこんなこと言うかって言うとね、明日からもね、みんなで気持ちいい日々を送りたいわけですよ、それがね、それが」

 

「美しき人間の日々なわけですよ」

 

ウォオオオ!!!最早そこに傍観者はいなかった。皆、この小太りの男に想いを乗せ、そして、この小太りの男は皆の声援をその身体に乗せ戦うのである。

 

「さっきからごちゃごちゃうるせえんだよ!!!」

男の拳が小太りの男に向かって走る。

拳は小太りの男の顔があるべき空間を通過した。

小太りの男は身を低くし、躱していたのである。

そのまま電光石火の勢いで男の腰にタックルを入れた。

男はたまらず床に転がる。

次の瞬間には男の腕は小太りの男の足と腕で完璧に押さえ込まれていた。

腕ひしぎ十字固めの体勢である。

恐ろしく早い関節技であった。

「本当はね、腕なんておりたくないんですよ、今日、ここで暴れたあんたとも俺はいつか酒飲んで笑い合いたいのよ。でもね、だからこそ、本当に反省してほしいのよ、これがね、これが、僕なりの、そう、名付けるなら、ぬくもりという名の獣道なわけですよ」

小太りの男はそう言い終えると同時に、男の腕をへし折った。

 

歓声が上がる。小太りの男は恥ずかしそうに手を振り声援に答えた。

この男、ロシア柔術であるサンボを使ったのである。

サンボはレスリングと柔道が合わさった、ロシアの格闘技である。

並大抵の使い手ではこうも鮮やかに極めることはできない。

この男、サンボ国際大会優勝経験を持つ、日系ロシア人、山口・ヴィクトロヴィッチ・タッカーシー、別名、サンボ⭐︎マスターと言われている男であった。