有限会社MUGEN本舗

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2023-01-01から1年間の記事一覧

自分を少し許す

今日、昔からの友達と飲んでほんの少し10年前の不甲斐ない20歳の俺を許すことが出来た。 そして、不甲斐ない30歳の今の俺を、多分40歳の俺は許してあげることが出来るんだろうな、と思うとだいぶ気持ちが楽になった。

意志の力『西の魔女が死んだ』

俺のような心が汚れたアラサー弱者男性が読むには綺麗すぎる物語だった。 不登校になった少女とその祖母との暖かな交流が描かれる本作。マクガフィンは『魔女』という単語。 おばあちゃんはただの気のいい老婆ではなく、自身のことを魔女だと言う。そして、…

大人になるとは『人間失格』

人間失格を始めて読んだ時、ほとんどの青年が感じるように俺も「ああ、これは俺のことだ」と感じたのは高校生の頃。 人間失格は太宰治の代表作であり、一言で言うと心の弱い男が酒と女と酒に溺れてしまうお話である。 ひどい話だ。だが、なぜだろう、とても…

ありふれたカタストロフ『ボッコちゃん』

たった数ページで完結するショートショートの巨人星新一の自選短編集が『ボッコちゃん』であり、数ある星新一の作品の中でも最高傑作の呼び声が高い。 学生時代に一読したことがあり、その時は『星新一のショーショートは読みやすいし、面白いし最高や!』と…

緩やかなグレー『チルドレン』

チルドレンは2004年に発売された伊坂幸太郎の短編連作である。 大人気作家伊坂幸太郎の初期作品として人気のこの本の感想を今回は書いていこうと思う。 ・あらすじ ギターを愛する風変わりな青年陣内を中心に巻き起こる5つの不思議な事件を描く本作 ・『バン…

ニートの哀歌 「変身」

カフカの変身は長年名作として愛されているわけであるが、その解釈の仕方はかなり多様で現在に至るまでこれ!と言うものがない。 あらすじは、ある日セールスマンのグレーゴルザムザくんが虫になってしまい、家族から酷い扱いを受けて最後には死んでしまうと…

真実の美しさは消えない『博士の愛した数式』

恥ずかしながら読み終わった後、しばらく呆然とするほど感動した。 『博士の愛した数式』は記憶が80分しか持たない元数学者とその家政婦である私と息子のルートの暖かな交流を描いた名作である。 家政婦として私が派遣されたのは、記憶が80分しか持たない数…

自己不全を抱く男の地獄めぐり、『国境の南、太陽の西』

ときどき物語の説明なんてものはしない方がいいように思う。言葉に意味を見出そうとしたとき、それまで無限にあった解釈がたったひとつの陳腐なものに変わってしまう気がするからだ。 ミロのヴィーナスの手は失われたからこそ、無限の美しさを手に入れたので…

トラウマ漫画『ライチ☆光クラブ』を読む

前日岩盤浴に行った折に、ライチ☆光クラブを読んだ。 帝一の國と同じ作者ということで、『外連味のあるギャグ漫画』なんだろうなぁー!と思って読み始めたのだが、 冒頭で女性が腸引き摺り出されて殺されるのを見て、ギャグじゃねえじゃん!!!と憤慨しまし…

すべての生物が死に絶えた砂漠…『砂の女』

先日、カートヴォネガットジュニア御大の遺作、『国のない男』を読んだ。 その中で、特に小説の書き方という項目が心に残った。 章の中で御大は物語曲線を丁寧に解説してくれる。 物語曲線とは縦軸を感情の良し悪し、横軸を時間の経過でもって表した表のこと…

問答無用の面白さ、熊嵐

日本史上最悪の熊事件、『三毛別熊事件』をモチーフにノンフィクションの巨匠吉村昭先生が綴った大傑作。それが熊嵐である。 ・あらすじ 大正、北海道開拓移民の貧しい村を巨大熊が襲った。熊は計6人の村民を食い殺し、その事件は地域住民を恐怖のどん底に叩…

アルケミストー夢を旅した少年ーの教訓

アルケミストー夢を旅した少年ーは日本では馴染みがあまりないが、世界中で大ヒットしたベストセラーだ。 作者パウロ・コエーリョはブラジル人。2度世界中を放浪した後にアルケミストを書き上げた作家である。 今作は小説というよりかはどちらかというと寓話…

存在の耐えられない軽さにおける愛とは?

先日、この存在の耐えられない軽さを読了した。なにやら20世紀最高の恋愛小説と言われているらしく、てっきり『ノッティングヒルの恋人』的なラブコメを想像していたがいい意味で裏切られた。 これは恋愛小説というよりも、愛についての哲学的な問いかけなの…

1984年の希望

あらすじは知っているけれど、読んだことはない本の代名詞(と訳者あとがきに書かれている)1984年を読了。 80年近く前に書かれた本ながら、その内容たるやいつの世にも通じる普遍的恐怖に彩られており、時代を場所を超えて多くの人に今なお読まれている名著中…

消えたバナナ

俺は毎朝バナナを1本食べて仕事に行く。 ほんのりと腹が満たされて、そしてそこはかとない空腹感を抱えながら職場まで行くのがルーティーンなのだ。 しかし、最近、バナナが完全に売り切れていやがる。 一体なぜなのか、1週間くらいずっと補充されない。バ…

遺言と言う名の書き置き

不穏なタイトルだが、一切自ら死ぬつもりはないので安心して欲しい。 むしろ、強く生きたいと願っている。 今、とてもとても長い(と言っても文庫本一冊くらい)小説を書いている。しかもワードとかじゃなく手書きで!(手書きの後清書するつもり) 面白いかどう…

一人称単数をどう読むのか?

遅れること2年。ようやく村上春樹の「一人称単数」を読んだ。 俺は村上春樹のファンだ。熱烈なファンと言ってもいいかもしれない。彼の著作は長編はもちろん、短編、エッセイ、ほとんど全て読んだし、手元に置いてある。 村上春樹との出会い 俺と村上春樹の…

第八回「家にたどり着けない」岐阜県:墨俣城

心霊スポットはね、時空が歪むんですよ。 自称霊感のある友人にそんな事を言われた。曰く、心霊現象がよく起こる地域では地場が歪み、体感速度が遅くなったり、物音が急にピタリと止んだりするそうだ。 はいはい、と聞き流していたが、数年前に起こった出来…