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第七回「出せなかった手紙が集まる郵便局」 香川県:漂流郵便局

 3年前のお盆休み、

 俺はふと、漂流郵便局に行かなくては!

 と思った。

 

 漂流郵便局とは香川県の離島粟島にある郵便局である。

 ここは2013年に現代芸術家の久保田沙耶さんが制作された芸術作品のひとつである。

 島にあった旧郵便局舎を改築し、そこに「届けたいけれど届けられなかった手紙」を出すと郵便局内で展示してくれるのである。

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手紙はブリキの箱に入れられて、来館した人は自由に見ることができる。

 

 俺はこの郵便局のことを2013年の開局当時から知っていて、いつか行きたい、いつか行きたいと思っているうちに何年も経ってしまっていたのであった。

 

 恐らく、これは勢いで行かないと永遠に行かないだろうな!と思い立った瞬間に行くことにした。

 

 夜に出て、事故渋滞に巻き込まれ、日付が変わった時にはまだ神戸は三宮。

 三宮の近くの安いラブホテルに一人で一泊したのち、垂水経由で淡路島を通り四国へと入国した。

ちなみに、淡路島のサービスエリアで朝日が昇る瞬間を見たのだが、筆舌にしがたい美しであった。

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その後、香川で美味しいうどんを食べたのち、電車とバスとフェリーを乗り継いで、ようやく粟島に辿り着く。

 

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粟島には謎のモニュメントがいっぱい建っていていた!

 

さて、更にフェリー乗り場から歩いて、ようやく辿り着いた。

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局舎の中に入ると、名物局長の中田さんが出迎えてくれる。

中田さんは粟島郵便局で45年間働かれた後に漂流郵便局局長に就任。80歳を超えた今も来客者を明るく出迎えてくれている。

 

 早速手紙を読んだのだが、内容はさまざま。

 小学生の男の子が「PS4がほしいです」なんて短文を書いていたのには笑わしてもらったし、亡くなってしまった子供に対してお母さんが「元気に産んであげれなくてごめんね」なんて書いてある手紙には胸が痛んだ。

 

死んでしまった父に対しての感謝の手紙

元恋人への未練を書き綴った手紙

過去の自分へ向けた手紙

そして、未来の自分に宛てた手紙。

 

涙と同じで、思いというのはどれだけ抑えても溢れてしまうものなのだ。

そんな溢れざるを得なかった思いは手紙となり、この郵便局に流れ着き、その思いは名も知らぬ誰かに届く。

 

そう思うと、素敵!なんて一言では片付けられない思いに駆られてしまった。

 

じんわりと温かい気持ちになって島を後にした。

 

じんわりしたのも束の間、帰りの電車を間違えて、徳島行き急行に乗っていることに気が付き、慌てて下車。

高松駅に辿り着いたのは夜の10時過ぎで、くたくたになりながらホームで食べた肉うどんは無類の美味さだった。

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