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第六回「山奥の地蔵」 岐阜県:某山

 4年前の夏、仕事中ギックリ腰になった俺を友人のTさんが湯治に下呂温泉まで連れて行ってくれた。

 その話はここで記事にしてまとめてある。→平成最後の夏、下呂温泉でタイムトラベラーに会った話。 - 有限会社MUGEN本舗

 

  実はこの後、我々の身に妙なことが起こったのである。

 

 TさんはGoogleマップを見ながら帰り道を運転していた。

 Googleマップのナビは使ったことがある方なら分かると思うが、最短ルートを案内してくれて、それ故に訳の分からない小道に連れていかれることもある。

 その時がそうだった。

 恐らく、大通りは渋滞していたのであろう、我々はよく分からない山中に案内されてしまった。

 

 「こんな道、行きに通りましたっけ?」

 「通ってないな〜」

 

 と会話する我々。

 すっかり夜になっており、あたりは真っ暗だった。車も人も明かりさえない細い山道をただひた走っていると、突然大雨が降ってきた。

 車を叩く雨の音がひどく、山の変わりやすい天気に辟易していたとき、目の前のカーブに沿って見えたのである。なにが?降りしきる雨を弾くワイパー越しに見えたのはカーブに沿って

 

地蔵が何十体、少なくとも100体近く鎮座している姿である。

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ギョッとなり、絶句する。

山道のカーブにお地蔵さんがぽつんと建てられてるなんてことはよくある。誰かが亡くなったのだろう。しかし、カーブに無数のお坊さんがいるなんて、見たことも聞いたこともない。

 

赤いよだれがけを着たお地蔵さん達が、大雨の中、ヘッドライトに照らされてこちらを見ていたのだ。

 

 「見ました?」ようやく地蔵が立ち並ぶカーブが終わった時、俺が聞く

 「・・・」Tさんは無視である。

 「見ました?」もう一度聞く

 「なんかさ、おもしれえ話してくれよ」

    Tさんまさかの現実逃避。とりあえず怖さを紛らわす為に、うんうんと頭を捻って場を盛り上げる発言を考えていたのだが、

 

 次のカーブにも無数のお坊さんが立ち並び、こちらを見てからではないか…

 

     「Tさん、俺、面白い話するの無理っす」

 俺たちはその後黙り込んで、ひたすら山道が終わるのを待った。

 

 後日、調べたのだが、岐阜県下呂市には無数の地蔵が鎮座する地蔵寺がある知った。まあ、恐らくそこだろうとGoogleマップで調べれば地蔵寺は民家が立ち並ぶ住宅地の中にあり、決して山の中にはない。

 

 いくら調べてもあのカーブに建てられた地蔵の正体は分からなかった。

 あれだけ目立つ場所に建てられていたのならば誰かがネットの記事にしていてもいいようなモノなのだが。

 とは言え、もう一度現地にまで行って探す勇気もない。

 アレは本当にこの世のものだったのだろうか