有限会社MUGEN本舗

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オススメしてもらったweb小説を読む

その昔、俺が中学生で初めて小説を『小説家になろう』で発表した頃、なろうの短編小説の感想を毎日更新しているブログが2〜3個ありました。

 

 

俺は短編小説を中心に書いていたので、そう言ったブログに取り上げられることも多く、取り上げられると、『やったぜ!!!』と言う気持ちになり、激奨されれば天にも昇るような気持ちになったり、批判されればグルルと唸りながらも見返してやろうと更に筆をとったり、大変救われました。

 

 

あれから10年以上経ち、今や俺も立派なアラサーになりました。歳をとると確実に身体は動きづらくなることを実感し、でも、代わりに考える時間が増えることも学びました。

ふと、ある日、自分だけでなく、創作を愛するものとして、同じく創作を愛する方々の一助になれればと思うようになりました。

これも加齢による心境の変化なのでしょうか。

 

とにかく、そう言った経緯から少しでも創作界隈を盛り上げる為、定期的に感想をブログにアップしようと思っております。

 

今回はtwitterで連絡をいただいた作品の中からまずは7作紹介&感想を書かせていただきます。

 

 

 

1.ミニトマトと炎症性/ハルハル(春a裏)様作

https://ncode.syosetu.com/n8888ga/

 車が病気になると言うオリジナリティ溢れる作品。

 これは何かのメタファーなのかと読み進めていく感覚は村上春樹の短編小説を思い出しました。描写も非常に丁寧で短いながら読み応えもあり、とても面白く読めました。

 読後のどこか余韻の残る、そして、主人公の心理を思わず考察したくなる作品で初っ端からレベル高いぜ…と思いました。

 

 

2.便利な家 【ショートショート】/いとうヒンジ様作

https://ncode.syosetu.com/n9914hh/

 便利な家と書かれた看板を発見した主人公は内見に行き、あまりの便利さにおどろくが・・・

 星新一を思い出させるショートショート。個人的にドストライクであります。

 ただ、あまりにも不条理すぎる!(そう言った点で言うと小松左京的な感じでもありますな)

 この作者様、ほかにもショートショートを書かれておりますので、いろいろと読ませていただきたいなと思いました。

 

 

3.銀河漂流ウラシマン/樫山泰士様作

https://ncode.syosetu.com/n0735hf/

 実は浦島太郎のお話の真実はこーだぜ・・・

 会話劇で繰り広げられる骨董無形なコメディでした。

 あら、銀河ヒッチハイクガイド的なお話かな?と思ったら、まさかのガ〇ダム!?スター〇ォーズ?あれ、エ〇ァンゲリオン?と話が二転三転して最後のオチで笑わせてもらいました。

 白眉なのは、この小説、1話目の引き込む力がすごい。日本書紀の本当にある話を最初に出しておいて、なるほど、神話をベースにするのかと思ったらまさかの脱線。

 最後まで楽しく読ませていただきました。

 

 

4.忘レ慰ーワスレナグサ/斐古様作

忘レ慰 ━ ワスレナグサ ━(斐古) - カクヨム

 去っていくワタシと残されるアナタの思いを花言葉に託しながら繰り広げられるポエトリーな一作。

 アナタとワタシのリフレインがとても気持ちよく、まさにご説明いただいていたような詩的な作品でした。

 しかし、現実に汚された俺は卑しくも『最後にやべえどんでん返しとかあるのかな?』と邪推しながら読んでしまいました。。。

 繊細な作品ですので、俺のような死にかけのゴブリンではなく、うら若き乙女達や恋に悩む男子達に読んでほしいと思う一作でした。

 

 

 

5.い・も・ほ・り~運の悪い連続少女拉致監禁殺人鬼の俺が噂好きなババアのしもべになったわけ~

/モロ平野様作

https://ncode.syosetu.com/n5653dk/ 

 シリアルキラーの主人公はその凶行を老婆に見られるが実はその老婆には秘密があり・・・

 グロテスクな内容ですが、主人公の不謹慎すぎる軽さで重くならず、すらすらと読み進められました。

 タイトルからもっとコメディ色強めかと思ってましたが、どん底ホラーでオチも秀逸。ただ、4話以降のネタ晴らしパートが説明口調だったのが気になりました。

 もっと暑い夜に読みたかった!!!(笑)

 

6.

kakuyomu.jp

N.K様作

 なんと言っても、改行のない文章は残り幾ばくも無い主人公の心情をうまく表現出来ていて素晴らしいと思いました。

 途中、突然始まる復讐劇・・・復讐したい4人とは誰なのか?

 とてもセンスが良く、これで高校生か・・・俺が高校生の頃なんてハチャメチャな小説もどきしか書けなかったのにすごいなぁ(今もか(笑))と思いました。

 

7.夏が過ぎたら/都鳥様作

https://ncode.syosetu.com/n5270gz/

 まず、なにより設定が面白い。温暖化がひどすぎるから夏は冷凍睡眠しましょうってのが思わずパク・・・参考にしたくなる設定でした。

 とても短い作品ながら、構成がしっかりしていて満足感がありました。

 この設定ならもっと長編でもいいのではないかと思いました。それならオチのエモーショナルな展開も生きるし、と言うか、俺がこれの長編を読みたいだけです。

 

 

:感想:

 レベル高いっすね・・・俺なんてwebに上げる短編なんかは推敲とかせずにパッと挙げちゃうもんだから、誤字脱字のオンパレードですよ・・・(俺のレベルが低いのか…)

 今回紹介した7作のうち、俺の琴線にビンビンに触れたのは「ミニトマトと炎症性」でした。純文っぽい内容で(実は俺、webではクソギャグばっか書いてるけど、応募する賞はどれも純文学系なんです)読んでてとても参考になりました。

 

 近い内に他の紹介してくださった小説も紹介いたしますので、お楽しみに!

 

ヒストレスヴィラからの脱走

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今日は少しだけ親父の話をしようと思う。

俺は親父に似たと思う。

 

俺の親父は若い頃は遊び人だった。

パチンコとパチスロとタバコが大好きだった。

タバコ嫌いの母さんとよく結婚できたなと思う。

休日は遊びまわる訳で、当然、俺や兄貴の面倒は母さんに任せっきり、幼少の頃の親父との思い出はほとんど皆無に等しい。

俺はそんな親父の事が好きになれなかった。

と言うよりも、親子なのに何を話していいかわからなかった。

 

親父は読書家で漫画好きの小説好き、おまけにゲームも映画も大好き。

親父の愛好品は親父の書斎から溢れ出し、遂には俺の部屋にそう言ったものを置くようになり、俺の部屋は親父の物置へと様変わりしていった。

 

俺は親父と話す代わりに親父の愛好品達を手にするようになっていった。

きっと、俺なりに親父のことを知りたかったからであろう。

 

俺はコロコロコミックスやジャンプを読む前にAKIRAを読み、かいけつゾロリを読む前に夢枕獏を読むようになった。お陰で漢字にはだいぶ強くなれた。

1番影響を受けたのは映画だった。

親父は幼い俺たちがいようがいまいが御構い無しに、グロ映画を喜んで見る男だった。

親父が見ている横で見たキルビルの衝撃を今でも忘れない。

 

こうして、俺は親父の放任主義の英才教育により、立派なオタクに育っていったのであった。

 

 

高校生の頃であったろうか、部屋にいる時に親父が俺の部屋にやってきてゴソゴソと何かを探している。

この頃には親父の遊び癖も大分おさまり、更に俺は親父の影響でサブカルチャー好きになっていたので話も合い、仲良し親子、とまではいかないまでも普通の親子と言って差し支えない関係性は築けていた。

 

「どしたん?」

「いや、探し物」

と親父は言う。

なかなか見つからないみたいだったので俺も手伝う。

と、本棚からズタボロになった本を見つけた。

「あ、それ、懐かしいな。筒井康隆だ」

親父はそう言った。

聴くと、親父は昔、大の筒井康隆好きだったらしい。作品は全部揃えたらしい。

俺はそんなこと知らなかった。親父が俺の部屋に膨大に置いいった愛好品達の中に筒井康隆の本が一冊もなかったからだ。

 

「昔、捨てたんだよ。全部。でも、これだけは捨てれなかったんだよな」

と親父は懐かしそうに言った。

 

その本のタイトルは「アフリカの爆弾」と言う短編集。

なんでも、親父はその本に収録されている「ヒストレスヴィラからの脱走」と言う短編をいたく気に入って人生の辛い時によく読んでいたらしい。

 

そんなことを言っているうちに探し物は見つかり、親父は部屋から出ていった。

そんなことを親父から聞いたら、その話を読まぬわけにはいかぬ。

ヒストレスヴィラからの脱走はおかしな話だった。

 

主人公の男は事業に失敗し全てを失う。

男は自分を見つめ直すため、地球人が誰一人といない惑星ヒストレスヴィラで孤独に数ヶ月テントを張って暮らした。

ある日、郵便が彼の元に届く、彼が持っていた株が急上昇して、一挙に彼は大金持ちになり、仲間達とまた事業を地球でしようではないかと言う話になった。

急いでヒストレスヴィラから地球に帰ろうと駅に行くも、地球行きの切符は3年前に売り切れており、すぐにヒストレスヴィラをたつことは出来ない。

とにかくヒストレスヴィラと言う惑星はのんびりとした惑星なのだ。

あの手この手を使いヒストレスヴィラからの脱出を試みる主人公。 

しかし、全てうまくいかない。ヒストレスヴィラの住人に聞いてみれば、この惑星にやってきたものでヒストレスヴィラから出ていったものは一人もいないとのことだ。

主人公は絶望的な気分になっていたが、その時、汽車が彼の前を走っていった。飛び乗る主人公。これでようやくヒストレスヴィラから出られる。安堵からうたた寝をした主人公。

起きた時、汽車はとある駅に着いたところだった。見覚えがある場所だ。そこはヒストレスヴィラであった。

主人公はヒストレスヴィラから脱走することが不可能であることを悟る。

 

辛い時に読むには暗い話だ。

俺はなぜ親父がこの話を気に入ったのか全く理解できなかったが、仕事を始めてから少しだけわかった気がする。

 

親父は日常から脱走したかったのだろう。

社会人になってから、毎日は同じことの繰り返し、昨日と今日が入れ替わっても気付かないくらいである。結婚して子供など出来ようものなら人生から冒険は足跡1つ残さず消え去り、残るは安定と言う名の生暖かい泥沼である。

 

だから親父は俺たち家族を置いて遊び歩いたのであろう。

 

それこそが親父にとってのヒストレスヴィラからの脱走だったのだ。

 

今、俺は働き初めて数年が経つ。

毎日は優しく、生温く、穏やかで、過去に抱いていた怒りや憧れや夢を忘れさせるには十分すぎるほどだ。

 

俺もいつのまにかヒストレスヴィラの中にいるのかもしれない。

現代の奇書「東海林さだおの弁当箱」

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ずっと読みたかった本が届いて、今読んでいる。非常に面白くて大満足である。

 

 

タイトルは「東海林さだおの弁当箱」

 

皆さんは東海林さだおをご存知ですか?

知らない?そんなはずはない。

では質問を変えよう。

彼をごぞんじですか?

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東海林さだおさんはアサッテ君の作者として毎日新聞に40年間ご寄稿していた御大であらせられる。

その他にもエッセイストとしても有名で、エッセイのほとんどが連載40年越えと言うからこれはもはや仙人の域である。

 

そんな東海林さだおさんのエッセイでひときわ面白いと思うのが、料理のエッセイだ。

東海林さんの描写するご飯はたまらなく美味そうだ。

東海林さんのエッセイは底抜けに明るい。

へへへっと笑ってスラスラ読める。これはストレス社会を生きる我々にとって正に心の栄養剤と呼んでも差し支えないのではなかろうか?

 

 

俺の元に届いた「東海林さだおの弁当箱」は文庫本にして、700ページ超の大作である。

内容は全て食べ物についてのエッセイである。

 

 

まだまだ読みかけではあるが、これがべらぼうに面白い。ラーメン、弁当、ビール、みそしる、おじや、カツカレー、天丼、ハム、ソーセージ、ピロシキ、アイスクリーム、ぜんざい、イカ焼き、カニすき、かきふらい、オムライス…となんでもござれである。

あかん、書いていたら腹が減ってきた。

 

 

しかしながら、書きに書いたもんである。700ページも食べ物オンリー。しかも、どのページも明るく面白い。

 

俺が思うに、これはもはや狂気ですよ。

有名な奇書にドグラマグラと言うものがある。

読んだものは気が狂うと言う噂から、未だに人気の本だ。(そして未だに俺は読んで気が狂った人を見たことがない)

 

そのドグラマグラよりも、本書「東海林さだおの弁当箱」は奇書と呼べよう。

だって、皆さん考えてください。

あなたなら、明るくご飯についてざっと300編書けますか?

泣きたい日もあるだろう、腹が立った日もあるだろう、しかしながら、そんな感情に蓋をしてつらつらと飯についてひたすら書くのである。

 

「東海林さだおの弁当箱」とは、プロ根性によって作り上げられた現代の奇書なのであると俺は思うのだ。

 

 

 

中島らもよ永遠に…

俺の永遠の師匠、俺の永遠の憧れ、

それが中島らもだ。

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中島らもは20年ほど前に活躍していた文筆家だ

 

らもさんは名門校の灘中に入るも、灘高に上がる頃にはすっかり落ちぶれてしまい、悪友達と空き教室で、酒とタバコに溺れてしまう。教師達は彼らを叱るでもなく、いないものとして扱うようになった。

大学は地方の美大に進むも、将来の不安からほとんど大学の時の事は覚えてないと言う。

ダラダラと過ごし、就活もせずに、就職先もないまま卒業しようとしていた頃、彼女が妊娠。親類のつてを頼りに営業マンになる。

そこで、バリバリに働きつづけていたが、会社の部長が事務の女の子に握りっ屁をして泣かしているところを見て、「この会社はダメだ」と会社を辞める。

 

そこから、フーテンのような生活を送る。

酒とドラッグと睡眠薬に溺れて行く。これはダメだと今度はコピーライターの学校に入ったり、一攫千金を目指してバンドを組んだりする。

広告代理店に再就職したらもさんはそこで才能を開花させ、数多の小説、エッセイを生み出して行くこととなる。

 

俺はらもさんのエッセイや小説が大好きだ。

どーしようもないほど人間臭さが文章から漂ってきて、それがどうしようもなく好きだ。

らもさんは躁鬱病を患っており、酒を飲んで無理やり気持ちを盛り上げて無理やり書いていたのだ。俺の好きな小説「こどもの一生」の後半は酒のせいで眼圧が上がりすぎて一時的に目が見えなくなってしまっていたために、後半は全て口頭で代筆してもらって書いていたのだ。

 

らもさんは酒に人生を狂わされ続けてきた。

らもさんの実体験が元になった「バンドオブナイト」「今夜すべてのバーで」でなどを読むと、どれだけこの人がめちゃくちゃな人だったかわかる。

 

らもさんのエッセイや小説はクスリと笑えて、たまに泣ける。

基本的にはギャグの人なんだけど、この人が時たま見せる真面目な話がとてもよい。

 

一冊、俺の好きなエッセイを紹介する。

・僕に踏まれた町と僕が踏まれた町

 

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らもさんの高校時代から大学時代までの体験を綴ったエッセイだ。

前半は高校時代の馬鹿話が続くが、大学に入ったあたりから妙に暗くなってくる。

特に記憶に残っているのが、友人が自殺した時の話だ。

彼は、手首を切り、ガスを開けて、死んだ。覚悟の自殺だった。

その時のことを振り返りらもさんはこう綴っている。

 

ただ、こうして生きてみるとわかるのだが、めったにはない、何十年に一回くらいしかないかもしれないが、「生きていてよかった」と思う夜がある。

一度でもそういうことがあれば、その思いだけあれば、あとはゴミクズみたいな日々であっても生きていける。

 

この言葉に俺は何度も何度も救われた。

 

 

らもさんは2004年にお酒に酔って、階段から転げ落ちて死んだ。

いつか、酒に殺されると言っていたらもさんらしい死に方であった。

 

生きていてよかった。そんな夜があと何度やってくるのだろうか?