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第四回「真夜中の縁切り神社」京都: 安井金比羅宮

 ふらりと京都は先斗町で酒を飲むでもなく、黙々と夜通し歩いた日があった。

 当時、俺は深く人生に悩んでおり、気晴らしに飲み屋街の先斗町に行ったはいいものの、酒を飲む気にはなれず、ただひたすらに通りを行ったり来たりしていた。

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 周りは浮かれた大学生ばかりで、アラサーの俺はなんとなく気まずい。

 不意にそういえばここらの近くに縁切り神社と言われている神社があるな、と思い出した。

 それが安井金比羅宮である。

 祭神は怨霊伝説で有名な崇徳天皇。

 京都にて、一人で歩き回るに及ぶ、ほんの少し前、霊感がある友人が「あそこはね、かなりヤバいよ。いや、神様じゃなくて、そこに行く人の悪い気がヤバいの」と言っていた。

 なるほど、せっかく京都くんだりまで来たのだ。一眼見てやろうと向かうことにした。

 

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 安井金比羅宮にはこのような歪な碑がある。

 ここを通り抜ける時、悪運が断ち切られ、戻る時に良縁が結ばれるそうだ。

 そのため、潜る時は断ち切りたい縁を思い浮かべて、戻る時は結びたい縁を思い浮かべるのが通説らしい。

 考えるなと言われると人は考えてしまうものだから、良縁を結ぶ時に悪縁を、悪縁を断ち切る時に良縁を思い浮かべてしまったらどうなるのだろうか?

 

 さて、俺が安井金比羅宮に辿り着いたのは、夜の12時過ぎであった。

 神社は17時30分に閉まるので、誰もいないだろうと思いフラフラと境内に足を踏み入れた。

 が、それが間違いだった。

 暗闇の中でボンヤリと見えたのは、女性と女性に手を引かれる小さな子供。

 

 思わずギョッとして後ずさる。

 あちらは俺に気がついていないようだ。

 その時、俺は丑の刻参りのことを思い出していた。

 

 丑の刻参りは、真夜中に五寸釘でもって藁人形を木に打ち付ける呪術。呪いをかけられた人は藁が刺さった箇所に異常が生じるという。

 丑の刻参りはいくつかのルールに則って行うのだが、最も重要なルールは誰にも儀式を見られてはならないということ。

 

 これは丑の刻参りに限ったことではなく、誰かを呪う時には細心の注意を払わなければならない。というのも、呪術とは失敗した場合、全て術者に返ってくるものなのだ。

 だから、呪いをかけているところを誰かに見られるなんてもってのほかなのだ。(呪術廻戦ブームの時に色々調べた)

 

   それを鑑みて状況を考察すると、

 この母親は夜中に小さな子供を連れて縁切り神社にやってきている。

 その行動自体少し異常だ。異常に何かと縁を切りたがっていると見てよいだろう。

 もし、そこまで強い感情を抱いていたならば、それはもはや、何かに恨みを抱いているのではなかろうか?

 そんな彼女が縁を切るだけで満足するだろうか?

 つまり、彼女は神に何かしらの恨みを成就させるために祈りにきたのではなかろうか?

 それは最早呪術といってよいのではなかろうか?

 

 結論、それを目撃している俺はヤバいのではなかろうか???

 

 母子がこちらに気がついたそぶりを見せるや否や俺は走り出していた。

 呪術がどうだはもしかすると考え過ぎかも知れないが、夜中に縁切り神社にいる人は単純に怖い!!!路地裏に逃げ込む。が、行き止まりでパニックになる。

 えいやと来た道を戻り、また走り大通りへと戻る。

 

 その日はそれ以上歩き回る気になれず、宿へと戻った。

 

 今でも思うのだが、一体夜中に子供を連れてまで来て切りたい縁とはどのようなものだったのだろうか。そして、縁を切られたモノは無事なのだろうか?