グリーンベイルでの冒険を終えて数日。
とんでもない喪失感に襲われている。恥ずかしながらクリアした時は少し泣いた。
ゲーム『Deadly Premonition』(レッドシーズ・プロファイル)は20代後半、30にもなろうかという成人男性の俺にとんでもない衝撃を与えやがった。
この記事ではDeadly Premonitionについての概要、オススメポイント、駄目なポイント、感想、ネタバレについて語りまくっていく。
・概要
Deadly Premonitionは2010年にPS3用ソフトとして発売された。
発売当初からあまりのゲーム性の悪さ、当時としても低いグラフィックレベルなどにより叩かれまくっていたが、ストーリーとキャラ演出があんまりにも良すぎる為に一部のゲーマーからは神作扱いされるという、まさに賛否両論を巻き起こしたゲームであり、あのギネスでも『もっとも賛否両論分かれたゲーム』と認定されている。
カルト的な人気を誇る今作は現在ではスイッチに移植され、お手軽に遊べるようになった他、なんと2まで発売される事態となり、発売から10年以上経つにも関わらずその人気は衰えていない。
俺自身も数年前からこのゲームの存在は知っており、よっしゃ、やるか!と思って買ってみたものの、あまりのゲーム性の悪さに一回投げている。
最近、意を決してもう一度トライしたところドはまりしたのだが、そもそも何がそんなに悪いのか、次の項目で説明していく。
・賛否両論分かれた理由
・オススメポイント
まずはいい点について触れていこう。
個人的に素晴らしいと思う点は2つ。ストーリーとキャラクター演出だ。
・ストーリーについて
アメリカの田舎町『グリーン・ベイル』で18歳のアンナが殺された。
この痛ましい殺人事件解決に乗り出したのが凄腕FBI捜査官のヨークである。
次々に発生する殺人事件、殺害現場に残された遺留品の数々、グリーン・ベイルに伝わる都市伝説と隠された凄惨な過去。そしてヨーク自身の過去。
謎が解けたと思えば、更に次の謎が現れる展開は一度始めてしまうと続きが気になりすぎて一日中やってしまうほどだった。
更に断片的に語られていく謎が最終盤に怒涛の勢いでつながっていく展開は見事としか言いようがない。
かなり大胆なことを言うと、ストーリーだけを見れば、生まれてからこれまでしてきたゲームの中で一番面白かったかもしれない。
そう思わせてくれるくらいこのゲームのストーリーは素晴らしかった。
主人公のヨーク兄貴。
・キャラクターについて
このゲームのストーリーの次に何が良いってキャラクターを上げざるを得ない。
オープンワールドゲーの本作は9キロ×9キロというだだっ広いマップを駆け巡りながら事件の謎を追っていくのだが、ゲーム中の時間が進む度に朝、晩が巡るGTAのようなシステムである。
そのマップ上でキャラクターたちはひとところに留まることなく、それぞれの生活を営んでいる。朝になれば出社し、日中は働いて、夜になれば家に帰って寝る。
更に彼らの人間関係は複雑で、Aは実はBの姉でCと不倫していて・・・みたいな設定が出てきて、キャラクター同士の関係性も見えてくる。すると、彼らが本当に生きた人間の感じてきて没入感が半端じゃなくなってくるのである。なんだか、町と人々に愛着が沸いてきちゃうのだ。
特に、今作のヒロインであるエミリーは最高に良かった。
彼女は主人公ヨークと共に事件を追う、地元の保安官補であるが、最初はヨークにつんけんしていたくせに、ストーリーが進むと親密な関係になり、彼女の人となりが見えてくる。
例えば、高校時代トラブルに巻き込まれた思い出を語ってくれたり、家族構成や両親との関係を話してくれたり、ふるまってくれる料理がまずかったり、それでいて正義感が人一倍強かったり・・・
もうちゅき!!!
となってしまうこと請け合いである。丁寧にバックボーンを描てくれて、尚かつ主人公ヨークに対する淡い恋心もしっかり描いてくれて、終盤までプレイしたプレーヤーでエミリーのこと嫌いなヤツ0人説を私は提唱したい。
更にキャラクターで言うと、主人公ヨークも良かった。
一見すると、変人で人の気持ちが分からないサイコパス野郎に思われるが、正義感と共に殺人事件に苦悩する姿も描かれ、ストーリーが進むとこんなに人間臭いキャラいないとすら思えてくるから不思議だ。
彼には空腹ゲージ、睡眠ゲージが設けられており、食事・睡眠を怠ると死ぬというめんどくさいシステムがある。しかも、服は定期的に着替えないと臭くなっていくし、髭も剃らないとどんどん伸びていく。非常にめんどくさいが、このひと手間が没入感を増すアクセントになっているのは明らかである。
また、ヨークは二重人格であり、作中もう一人の人格ザックに話しかけ続けている。
このザックの設定が絶妙で、ヨークが『どう思うザック?』と語り掛けてくると、選択画面が表示される。そう、ザックとはプレイヤーであり、我々プレイヤーも物語を紡ぐキャラの一人なのであると、強制的に事件に巻き込まれていくのである。
また、ヨークが夢に見る赤い部屋もゲームをカルト的な人気に押し上げた理由のひとつだろう。赤い部屋や赤い森が夢の中に出てきて、そこには死者や謎の少年が現れ、ヨークに助言を与えていく。赤い部屋はなんなのか?そしてザックの正体とは?
このザックの謎が解き明かされるシーンこそがこのゲーム最大の山場であると言っても過言ではない。
・駄目なポイント
続いて駄目なポイントも書いていこう。
まず、ゲーム性は本当に悪い。操作性も最悪、車の挙動おかしすぎてまともに運転できない。マップが広いくせに縮小できないので全体像が捕らえられない上に、進行方向が常に上で表示されるため、東西南北が分からず更に混乱する。
グラフィックが悪い。正直PS2レベル。あと、戦闘もバイオハザード1の操作性を2倍悪くしたような作り。そして敵が弱すぎてやりごたえがない。更に更に突然始まるQTEが地獄のような面白くなさなのに頻発するからうんざりする。
NPCが動き回るのはいいが、そのせいでサブクエスト受注&達成が非常に面倒。途中からサブクエストは捨てました。
正直、挙げればきりがない。マジでストーリーいいんだから、ストーリーそのままで作り直して欲しい。
・ネタバレ&感想
じゃあ、いよいよネタバレについて語っていく・・・
以下ネタバレなので、見るのは自己責任で
事件の犯人はジョージであった。
彼は町の保安官でみんなから信頼されていると思われていた。
しかし、本当の彼は幼少期に受けた虐待により精神異常をきたしていたのである。
町でとれる赤い種の幻覚作用、精神高揚作用を崇拝しており、『種を食べた状態で4人殺せば不死身になれる』という馬鹿な迷信を信じて殺人を行っていたのである。
彼に殺された少女たちは、種により中毒症状にさせられており、身体も心も彼に支配されてしまっていたのであった。
極悪非道な手口で少女たちを殺していたジョージの最後は落雷により死亡するという呆気ないものだった。
事件は解決したかに思われていた時、エミリーが町に訪れていたセールスマンフォレストケイスンに誘拐される。
実は彼こそが事件の黒幕であり、彼は赤い種の化身、悪の化身であり、ヨークが解決した事件の殆どの黒幕が彼であることが明かされる。
エミリーは彼に種を植え付けられ、腹から木が生えているえぐい状態で見つかる。
彼女に『殺して』とせがまれるヨーク。そして彼は自分の過去について完全に思い出すのであった。
かつて、ヨークの両親もケイスンに襲われており、その際、両親の惨殺の記憶に耐え切れず精神世界(作中でなんども出てくる赤い部屋)において、別の人格ヨークを生み出し、主人格はずっと赤い部屋の中で暮らしていたのだった。
ここで、主人格はヨークかと思っていたのが、実はザックだった。という大どんでん返しが起こる。
赤い部屋に行く時には大体小さな少年と出会ったり、双子の天使がいたりしたのだが、全てはザックとヨークの関係性を表したものだったのだ。
ヨークの目の前で力尽きるエミリー。その時、主人格ザックが遂に表層に現れる。
ではヨークはどこにいったかと言うと、ヨークは愛するエミリーの魂を追って森(作中で度々登場した精神世界の場所。恐らくあの世)へと旅立って行ったのである。
ザックは幸せそうに旅立って行く二人を見送り、ケイスンとの最後の決闘に挑み勝利する。
相棒、そして愛する人との別れを噛みしめながらザックはグリーンベイルの町を去るのだった。
・感想
ネタバレはゲームをやっていない人にとってはちんぷんかんぷんだろうが、やった身からすると、こんなに説明しづらいストーリーもないので許して欲しいと言いたいところだ。
というのも、このゲーム、敢えて全てを語りつくさないような余韻を残す終わり方や描き方をしているのである。これはこのゲームが俺の大好きなドラマ『ツインピークス』の影響をもろに受けているからだろう。
ツインピークスはカナダとの国境沿いにある小さな田舎町ツインピークスで少女殺人事件が起こり、その事件をFBI捜査官クーパーが追っていくという、まんま同じ話である。このドラマも事件を追っていくにつれ、悪の権化キラーボブとの対決、ひいては世界崩壊、ブラックロッジと言われるあの世とこの世の境目と物語が展開していく。
ツインピークスにドはまりした俺がこのゲームにハマらない訳がないのである。
このゲーム、ラストの展開がなんと言っても素晴らしい。
エミリーの死、過去との決別、ヨークの恋の成就、ザックの失恋。
エミリーの死は悲劇的だが、それによりザックは自由になれたし、ヨークはエミリーと結ばれることになる・・・この完ぺきではないが、完璧な展開に涙した。
全部一気に流し込んでくるから情報量えげつないって・・・
全てに決着がついた時、それは慣れ親しんだグリーンベイルや町の人々に別れを告げる時でもあり、没入感が凄かった分、喪失感も半端ではなかった。
2もあるらしいし、2も素晴らしいらしいが、ちとまだ余韻に浸っていないのでプレイするのはもう少し時間を空けてからにしようと思う。