人間失格を始めて読んだ時、ほとんどの青年が感じるように俺も「ああ、これは俺のことだ」と感じたのは高校生の頃。
人間失格は太宰治の代表作であり、一言で言うと心の弱い男が酒と女と酒に溺れてしまうお話である。
ひどい話だ。だが、なぜだろう、とても分かるのだ。主人公大庭葉蔵の心の揺れ動き、繊細すぎるほど傷つきやすい心に痛く感銘を受けたのをよく覚えている。
さて、それから10年経ち、今読むとまったく感動しない。それどころか腹立ってきた。
俺は読むのが早いほうなのだが、それでもたっぷり2週間使わなければならなかった。
大庭葉蔵の心の弱さがなんとも哀れで、さらに言えばその被害者意識や自意識過剰が鼻についてしかたなかった。
働いて酒をたてば全て解決といったところだろうよ…と思う。
俺自身、ひどい状況に追い詰められ、入院とまではいかなかったが、それでも地獄に近い精神状態になったことはある。俺はなんとかそこから真人間へと戻って来れた。
しかし、この大庭葉蔵は自ら進んで地獄へと行く。それは歪んだ自己愛に他ならない。
甘ったれるなと言いたい。
世の中地獄が当たり前。それでも、なお、人は生きていくのである。